Money1でも折りに触れてご紹介してきましが、韓国の『大韓航空』と『アシアナ航空』が合併します。これによって韓国にLCC(格安航空会社)ではない航空会社は一つだけになります。
韓国メディアでは「メガキャリアの誕生だ」などと悦に入っていますが、「大丈夫なのか」という話です。
そもそも『アシアナ航空』は経営が傾き、2019年には飛びそうになって身売りを模索していた会社。この年にはコロナ禍が直撃してさらに業績が傾き、買収すると名乗りを上げていた企業も手を引く有様に。
国策銀行『産業銀行』が資金を投入して延命させた揚げ句、政府が描いた絵図で『大韓航空』との合併になんとか漕ぎ着けたという過去があります。
『大韓航空』と合併するから『アシアナ航空』の業績は大丈夫なのか、不問に付していいのか――という話をご紹介します。結論からいえば、『アシアナ航空』の業績はまったく良くありません。
『アシアナ航空』は純利益をプラスにするのが困難な会社である
コロナ禍を抜け出した後、2020~2025年の『アシアナ航空』の総売上・営業利益・当期純利益を並べてみます。以下をご覧ください。

※▲はマイナスの意味です。
⇒『韓国金融監督院 公示システムDART』公式サイト
営業利益が黒字になったのは2021年の「4,559億ウォン」ですが、直近2025年には「-3,425億ウォン」とまた赤字転落しています。
ご注目いただきたいのは、当期純利益が黒字になったのは、直近6年間で2022年「1,565億ウォン」ただ一度しかないことです。
要するに、『アシアナ航空』というのは営業段階で利益を出しても、その下で毎年のように巨額の費用が発生して利益を食ってしまう会社なのです。
では、なぜこんなことになるのでしょうか?
航空会社には独自のコストリスクがある
大きな理由は三つあります。
第一が巨額の有利子負債と、それに伴う金融費用です。
航空会社はもともと航空機購入・リースなどで負債が大きくなりますが、『アシアナ航空』は長年の財務悪化も重なって、財務体質が非常に重い(悪い)のです。営業利益からさらに支払利息などの金融費用が差し引かれます。
これは「飛行機を飛ばして儲かったか」を示す営業利益には入ってこない費用ですが、最終的には当然、純利益を削ります。
第二が為替です。これがアシアナにはかなり痛いのです。
航空会社は、
航空機リース料
航空機購入代金
燃料代
海外整備費
外貨建て借入金
etc.
――のドル建ての債務・支払いを大量に抱えます。
したがってウォン安・ドル高になると、外貨建て負債をウォン換算した際の負担が膨らみ、為替差損が発生しやすいのです。
これは『アシアナ航空』の損益計算書を読む際に非常に重要です。旅客を運んで営業黒字を出していても、ウォンが急落すると、その下の金融損益で一気に利益を失うことがあります。
第三が、営業外・特別要因です。
資産・投資関係の評価損益、デリバティブ、航空機関連資産、統合に伴う費用など、その年固有の損益も加わります。
象徴的なのが2021年です。
営業利益は「+4,559億ウォン」もあったのに、最終的には「▲1,880億ウォン」です。営業利益と当期純利益の差が「6,439億ウォン」もあります。
また翌2022年には貨物特需などによって史上最高の営業利益7,416億ウォンを稼ぎましたが、それでも純利益として残ったのは1,565億ウォンだけでした。
『アシアナ航空』自身も、2022年について「2018年以来初めて当期純利益が黒字転換した」と発表しています。これだけ営業利益を稼いでようやく5年ぶりに最終黒字になったわけです。
ただし、直近2025年には営業利益よりも当期純利益の方が(マイナスが)少なくて済んでいます。
しかしこの期が営業利益と当期純利益が共に赤字であった――という結果に変わりはありません。
『アシアナ航空』はこのようにけっこうポンコツな会社です。『大韓航空』との合併は明らかに同社を救済するためのものです。『大韓航空』にとっては大きなリスクといえます。
『大韓航空』が手に入れるのは、路線網、発着枠、航空機、人材、顧客基盤だけではありません。『アシアナ航空』が抱えてきた低収益性や財務上の負担、統合コストも一緒に引き受けることになりるのですから。
規模が大きくなったことと企業価値・収益力が高まったことは同義ではありません。
「メガキャリアの誕生だ!」と喜んでいる場合でしょうか。
成功しないと断言はしませんが、統合後の数年間は、
❶営業利益率
❷純利益
❸有利子負債・金融費用
❹統合関連費用
❺貨物事業売却後の収益構成
❻アシアナ由来の機材・人員・路線
――をどこまで効率化できるかを追わなければならないでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)





