開発途上国が先進国の技術力に追いつくには長い時間がかかります。人材の育成から始めると大変なので、先進国から技術者をひっこ抜いてくるという手が使われることがあります。
韓国メディア『マネートゥデイ』に、中国企業に破格の待遇で誘われた韓国の人が「使い捨て」にされているという、実例を引いた記事が出ました。
一部を以下に引用します。
国内の大企業A社出身のキム・ヨンチョル(仮名49歳)部長は、2年前に中国の土を踏んだ瞬間がいまだ忘れられない。
当時、中国のディスプレーメーカーの子会社にスカウトされたが、韓国の年俸の2.7倍、子供の教育費と居住費を別途支給するという条件だった。
何よりも金部長は「基本的な3年契約に加えて、いくらでも雇用を延長することができる」という条件が気に入った。
金部長は、苦心の末、中国で「人生の第2幕」を始めることにした。韓国の中・高等学校に通っていた子どもたちまで全て連れて中国に居所を移した。
しかし、金部長はわずか1年で中国の実像をひしひし痛感としなければならなくなった。一日で失業者に転落したからである。
金部長をスカウトした中国企業は、当初提示した条件とは異なり、1年のみで金部長を解雇した。金部長の利用価値が期待以下だったと判断したからである。
金部長は「一方的な契約破棄であったが、外国人が現地で訴訟を起こすのは難しい」とし「3年以上中国でキャリアを積んでみたが、全ては水泡に帰した」と語った。
⇒参照・引用元:『マネートゥデイ』「年俸3倍で住居まで…『中国の誘惑に負けていった部長1年のみで』」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
年俸3倍などのエサで釣って使い捨てにする。
どこかで聞いたような話です。かつて韓国企業は日本の技術者の引き抜きを行っていましたし、それと同様のことを中国に行われたというわけです。自業自得・因果応報という面もあるでしょうか。
もちろん、このような「甘いエサで人材を釣って使い捨てにする」ことは現在も続いているでしょう。
中国企業は「約束を守らない」し「中国で外国人が契約を巡って訴訟を起こすのは難しい」ということを教えてくれるいい例となっています。
また同記事は、中国のバッテリーメーカー『CATL』が2019年に韓国の同業メーカーに勤務する部長以上の従業員に「180万元(日本円で約2,718万円)」の年俸を提示したと書いています。
韓国と中国の技術格差が縮小するにつれ、「韓国の人材を引き抜き → 使い捨て」という例は縮小すると思われます。しかし、日本は警戒を続けなければならないでしょう。
今回の新型コロナウイルス騒動によってチャイナリスクが改めて認識され、中国への警戒は強まっています。日本人技術者の皆さんも、くれぐれも中国のワナにひっかからないように注意してください。
(柏ケミカル@dcp)