先に、韓国の文在寅大統領は、金大中大統領に倣(なら)い、南北首脳会談を行いノーベル平和賞を狙っているのだ、という件をご紹介しました.
文大統領は10月29日にバチカンを訪問し、ローマ教皇に謁見して「北朝鮮を訪問するよう」に要請しましたが、実はこれもかつてあった金大中大統領の動きと符合するのです。
2003年、金大中大統領はバチカンを訪問し「北朝鮮を訪問するよう」に要請しました。
浅見雅一先生、安延苑先生の共著『韓国とキリスト教』にこの当時の事情を解説した箇所がありますので、少し長くなりますが、以下に引用します。
(前略)
二〇〇三年三月、カトリックの信者として知られていた当時の大統領金大中が、バチカンにローマ教皇ヨハネ・パウロ二世を訪問した。教皇は朝鮮半島の統一に多大な関心を寄せていた。面談の際、教皇の北朝鮮訪問が議論されたと言われているが、後に金大中自身が教皇に北朝鮮訪問を働きかけたことを認めている(岩佐場・康訳『金大中自伝II』)。
結局、教皇の北朝鮮訪問は教皇の健康問題と北朝鮮の否定的態度によって実現することはなかった。
金大中は、北朝鮮の問題にバチカンを巻き込むことを意図しており、自身の「太陽政策」に対して教皇のお墨付きを与えてもらおうとしたと見られている。
バチカンは、北朝鮮がカトリック教会を認め、カトリック司祭の訪問を認めることを望んでいたが、北朝鮮はいずれの問題に対しても否定的であった。
教皇は、在任時に北朝鮮にたびたび特使を派遣しているが、大きな成果は見られなかった。
(後略)⇒参照・引用元:『韓国とキリスト教』(著:浅見雅一・安延苑),中央新書,2012年07月25日発行,pp126-127
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
このように、文大統領が現在行っていることは、金大中大統領の過去の行動をなぞっているように見えます。バチカンをテコにして再び南北首脳会談を開催する道筋をつけようというのですが、果たしてうまくいくかどうか。
韓国ではキリスト教が宗教と深く結び付いている
ちなみに、韓国の大統領にはキリスト教徒が多いのですが、これは偶然ではありません。
朴正煕(パク・チョンヒ):軍事政権
全斗煥(チョン・ドファン):軍事政権
盧泰愚(ノ・テウ):–
金泳三(キム・ヨンサム):プロテスタント
金大中(キム・デジュン):カトリック
盧武鉉(ノ・ムヒョン):カトリック
李明博(イ・ミョンバク):プロテスタント
朴槿恵(パク・クネ:):カトリック
文在寅(ムン・ジェイン):カトリック
そもそも韓国はキリスト教徒が多い国です(日本ではカトリックとプロテスタントをひっくるめてキリスト教と考えますが、韓国ではこの2つは明確に区分されます)。また、日本併合当時には反日独立活動の思想的背景、また軍事政権下では民主化運動の拠点となったため、韓国ではキリスト教と政治が結び付いているのです。
さらに、キリスト教徒が多いことから、これは票田になります。実際、李明博(イ・ミョンバク)大統領は『所望(ソマン)教会』の役員(長老)を務めた人で、息子に新しい教会を任せたりしています。
韓国政治とキリスト教の結び付きは日本人が思っているよりもはるかに強く、根深いものがあります。韓国の皆さんの考え方や政治活動をキリスト教という視点で切ることもできるでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)