北朝鮮がローマ教皇の訪問を望むのは「金日成にさかのぼる」

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韓国文在寅大統領は、ローマ教皇が北朝鮮を訪問してくれるよう、わざわざバカチンに行ってまで依頼しています。

文大統領は「北朝鮮がローマ教皇の訪問を望んでいる」として依頼しているのですが、この点に違和感を感じる人は多いのではないでしょうか。

そもそも北朝鮮は共産主義の国なので、宗教は禁止されています。信者がいるのかどうかも分からないのになぜ北朝鮮がローマ教皇の訪問を望むのでしょうか。国民には金一族への忠誠を求めるのであって、金一族の上に神がいては困る国なのです。

しかし、北朝鮮がローマ教皇に訪問してほしいと希望するのは、実は金日成の時代、1991年にまでさかのぼるのです。

ローマ教皇に訪北を乞うのは国際的孤立を免れるため

1991年、金日成総書記は金永南に指示して外務省にローマ教皇を訪北してもらうための任務に当たるタスクチームを作らせています。

この背景には、北朝鮮の国際的孤立がありました。

1989年11月:ベルリンの壁が崩壊
1990年09月:韓国とソ連が国交樹立
1990年10月:東西ドイツが統一
1991年12月:ソ連崩壊

(一応)同じ共産主義国家であった欧諸国が次々と民主主義国家に体制転換し、韓国では盧泰愚(ノ・テウ)大統領の北方外交が活発となり、韓国はそれまで敵視してきた共産主義国である中国、ソ連との国交樹立に動いていました。

朝鮮半島を代表するのは我々ただ一国と主張してきた北朝鮮にとっては非常にまずい事態です。韓国が中国、ソ連と国交を樹立されてしまうと北朝鮮の存在感はなくなります。

この時期、ソ連衛星国家の崩壊、ソ連自身の崩壊によって、北朝鮮自身も遠からず自壊するという見方が出ていました。北朝鮮は国際的な孤立を深め、危機的状況に陥っていたのです。

そこで金日成総書記は「ローマ教皇の訪北」を思いつきます。この点について、太永浩先生の著書『三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録』から以下に引用します。

(前略)
このときの金日成の焦りぶりを示すエピソードがある。

当時、金日成はローマ教皇庁と接触することも考えていた。

ローマ教皇が外国を訪れるたびに大歓迎される様子をニュースで見て、教皇ヨハネ・パウロ二世が北朝鮮に来てくれれば外交的な孤立を解消できるのではないかと期待したのだ。

金日成は金永南に指示し、一九九一年、ローマ教皇を平壌に招くための「常務組」(プロジェクトチーム)を外務省内に組織させた。私もその一員として活動した。
(後略)

⇒参照・引用元:『三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録』著:太永浩,文藝春秋,2019年06月15日 第1刷発行,p.19
赤アンダーライン、強調文字は筆者による

著者の太永浩先生は、北朝鮮の外務省で長年に渡って勤務し、2016年に脱北。韓国に亡命した方です。

このように、太永浩先生によれば、北朝鮮は金日成総書記の思いつきによって「ローマ教皇に訪北してもらう計画」を立てたのです。目的は「北朝鮮は国際社会から孤立していない」と世界にアピールするためでした。

結局、この計画は頓挫するのですが、もしこれを金日成総書記の実現できなかった夢と捉えるのであれば、韓国の文大統領は「金日成の夢」を実現しようと躍起になっていることになるのです。

(吉田ハンチング@dcp)

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