Money1でも連日ご紹介しているとおり、ウォン安が止まり、ウォン高方向に急進しました。
これはアメリカ合衆国の最新CPI(消費者物価指数)が予測よりも下がり※、これで金利の上昇も一段落するのではないかという観測が広がったためです。
※予想「8.0%」に対して「7.7%」でした
『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)もほっと一息です。CPIは遅効性の指標であるため、これまでジャイアントステップ(75bp)を連続しても効果が今ひとつ見えづらかったのですが、これで「やっと効いてきた」と実感できた模様です。
もちろん、まだ7.7%と高水準ですので油断はできませんし、金利を上げる方向であることには変わりありませんが、もうジャイアントステップではないだろう――と予測されています。
「助かったかも」な『韓国銀行』総裁
ホッと一息なのは『韓国銀行』も同じです。
国内事情を考えると、このまま合衆国と金利を上げるチキンレースを続けるのは無理です。しかし、上げなければ合衆国との金利差が広がって資金流出懸念が大きくなります。
来る2022年11月24日、韓国の金融通貨委員会での「基準金利引き上げはどうするよ」「何bpにすればいいんだ」という切迫した状況だったのですが……合衆国の方で金利を上げるのを緩めてくれそうな雰囲気に転じたのです。
慈雨以外の何物でもありません。
『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁がこの状況について実に正直な感想を漏らしていますので、韓国メディア『ソウル経済』の記事から以下に引用してみます。
(前略)
李総裁はこの日、『韓国銀行』と韓国経済学会が共同で開催した国際会議開会式の直後、記者らと会った席で、「(米国のインフレが鈍化したというニュースは)短期的には明らかに良いニュース」とし、
「ただし、国際市場と国内市場にどのような影響を与えるかを見た後、24日の金融通貨委員会で基準金利を決定するだろう」と明らかにした。
(中略)
前日の合衆国商務労働省の発表によると、合衆国の10月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比7.7%上がり、市場見通し(7.9%)を下回った。
合衆国の物価上昇率が7%台に落ちたのは、ロシアがウクライナに侵攻した02月(7.9%)以来8カ月ぶりのことだ。
(中略)
李総裁も「最近になってインフレと為替レートが比較的安定する姿を見せているだけに、連銀の金利引き上げ速度もやや和らぐだろうと予想される」と展望した。
(後略)
『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は実に正直に「明らかに良いニュース」と述べています(ただし「短期的には」)。
「助かったぁ」という心持ちでしょう。
ことあるごとに韓国メディアから「通貨スワップを締結しろ」などと突き上げられ、そのたびに「要らねえってば」とはねつけてきた李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁ですが、内心は心穏やかではなかったはずです。
「合衆国が落ち着いてくれれば、なんとか切り抜けられる」と希望が湧いてきたでしょう。
もちろん、まだ分かりません。李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁が述べているとおり、短期で一息つけただけで、韓国経済の暗雲は垂れ込めたままです。
薄氷を踏む思いの戦いは続きます。
(吉田ハンチング@dcp)