孫正義代表取締役会長兼社長率いるソフトバンクG(グループ)は、前年同期比でほぼ1兆円近い損失を被ったことを発表しました。これは「ビジョンファンド」の出した赤字で、そのためソフトバンクGの2019年7-9月期の連結決算は7,001億円の赤字となりました。
14年ぶりの営業赤字、しかも巨額の赤字ということで「すわソフトバンク倒産!」みたいな話も出ているわけですが、これはあまりにも先走った意見です。孫社長が自身で述べているとおり、ソフトバンクGは「株式価値」(だけ)に着目して経営されているので、リセッションが明らかになり、株価の全面的な後退局面になれば危ういものがあります。
しかしながら、まだそこまでの事態には陥っておらず、もはやここまで来るとソフトバンクGという企業を一種の「ファンド」と見なすことも可能です。つまり、あちこちの企業の株式を保有しているため、「卵を盛ったバスケットが複数ある部屋」みたいになっているのです。
SVF(ソフトバンクビジョンファンド)というバスケットの卵が10個割れたところで、被害は限定されているというわけです。実際、今回の巨額赤字を使って他の部門が上げた黒字を消し込むことができるでしょう。極めて効果的な節税です。
『WeWork』に予想以上にお金を突っ込まなくてはならなかったでしょうし、それにはうんざりしたでしょうが、恐らく孫社長自身は「もうおしまいだ」なんて微塵も思っていないに違いありません。
もし、本当にソフトバンクGが倒産の危機に陥るとすれば、それは「部屋全体」が揺さぶられる巨大な地震が来たときです。「ソフトバンクG倒産」に期待する向きには残念なことでしょうが、そのような巨大地震が仮に来るとしても、今少しの時間が掛かると考えられます。もちろん何が起こるかは分かりませんが。
(柏ケミカル@dcp)