アメリカ合衆国が中国を「為替操作国から外した」という報道が出ました。中国との貿易協議で、「人民元切り下げを行わないという『実行可能なコミットメント』を行ったほか、為替のデータ公表に同意した」ための措置だとされています。
⇒参照:『Bloomberg(日本語版)』「米政府、中国の為替操作国認定を解除-貿易合意署名に先立ち」
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-01-13/Q42FC56K50XS01?srnd=cojp-v2
この報道の効果でしょう。人民元は以下のように14日中にも大きく「元高」に向かっています(チャートは『Investing.com』より引用)。
これで中国はバッファーを失う
かねてMoney1ではご紹介してきましたが、中国こそ完全な「為替操作国」なわけです。なぜなら中国政府がドルと元との交換レートを決定しており、事実上為替レートは自国の都合の良いように操ってきました。
また、流入するドルの信用の基に自国通貨「人民元」を発行する(しかもジャブジャブ)という一種の「経済実験」を行っているような国でもあります(それも限界に達しようとしてますがこれについては別記事にいたします)。
この為替操作国外しを行う代わりに中国が飲んだという「通貨切り下げの手控え」は、非常に重要な意味を持ちます。これはいわゆるポイズンピル(毒薬)と考えられます。これによって、中国は、合衆国の追加関税賦課を人民元安によって和らげる・無効化するというバッファーを失うのです。
かつてMoney1で「合衆国による25%の追加関税賦課は『1ドル=7.2元』のレートで相殺できる」という推計をご紹介したことがありますが、この約束で実効的に守られるのであれば、中国は自らの力でコントロールできる(してきた)パラメーターを失うことになります。つまり自らの首を締めたのです。
もちろん中国のことですから合衆国との取り決めなどいつ反故(ほご)にするか分かったものではありませんが。しかし、これはトランプ政権の大きな功績です。中国共産党の遅れてきた帝国主義を揺るがす一手といえるでしょう。
(柏ケミカル@dcp)