中国の通貨「人民元」の通貨安がさらに進行しています。ドル元のオフショアのチャートを見てみると以下のようになります(チャートは『Investing.com』より引用:以下同)。
オンショアのドル元チャートはもっと露骨で以下のようになります。
Money1では2018年の終盤からずっと触れてきましたが、アメリカ合衆国との関税賦課合戦の中、中国は「1ドル=7.0元」を超えさせないようにしてきた管理体制を緩め、「元安」を容認するようになっています。
これは、貿易戦争における「合衆国の制裁関税を相殺するため」と考えられます。以前もご紹介しましたが、およそ「1ドル=7.2元」の為替レートで25%の追加関税を相殺できるという試算があり、上掲のチャートを見ると実際にそのレートに向かっていることが分かります。
輸入コストの上昇はどうするんだ
通貨安が進行すると、確かにトランプ政権による追加関税の効果を減じることが可能ですが、問題は「輸入コストが上昇すること」です。現在中国は、食料品の多くを輸入に頼る国になっており、その最も顕著な例である大豆は自給率16%まで下がっているようです(2013年時点/『JBpress』記事より引用)。また石油の需要でも多くを輸入に頼っているのです(石油の輸入依存度は「60%」)※。
※データ出典は『World Energy Balances 2017,IEA』
元安は、当然このような輸入品目の購入コストを押し上げます。さらにまずいことに、合衆国からの輸入品目に追加関税を賦課しましたから、関税によるコスト増も重なります。関税が懐に入る政府はともかく、民間業者はたまったものではありませんね。
さらに、元安は「対外債務」の膨張を引き起こします。例えば、100万ドルを調達したとすると、「1ドル=7.0元」の場合「700万元」ですが、これが「1ドル=7.2元」になると「720万元」と借金が増えてしまいますね。外国に対する借金はドル建てですから、元安になると借金を返済する際のコストが増すのです。
中国は対外債務の非常に多い国ですので、元安を容認するのにも限界があります。中国の通貨当局もそこは計算しているはずですが、元安を容認しているうちにコントロール不能に陥る可能性も否定できません。
⇒『Money1』「中国『元安』進行! オンショア・オフショアとも安値更新中」
https://money1.jp/?p=9959
⇒参照:『Money1』「『人民元』の取引には『オンショア』『オフショア』の2種類がある!」
https://money1.jp/?p=4834
⇒参照:『Money1』「元安で追加関税を相殺できるが限度がある」
https://money1.jp/?p=8321
(柏ケミカル@dcp)