もう何度もご紹介していますが、韓国は不景気で、メディアは口を開けば「金利を下げよう」「先制的に金利を下げる余地がある」といいます。
『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は記者会見があるたびに慎重な発言を行い、韓国人記者を否してきました。
2024年06月18日、「物価安定目標運営状況点検会議」が開催され、その後、記者懇談会が行われました。この席上、またしても「最近、物価安定の情勢となっているが、金利引き下げに近付いたと判断するか?」という質問が出ました。
今回がいつもと違うのは――さる06月16日、大統領室の政策室長である成太胤(ソン・テユン)政策室長さんがラジオ番組に出演して、
「かなりの部分で金利引き下げが可能な環境に変わっており、金融政策を柔軟に行うことができる部分がある」
「金融政策に影響を与える物価指標であるコアインフレ率が最近安定しており、他の国も金利を引き下げている状況」
と述べてしまった――ことです。
成太胤(ソン・テユン)政策室長がいうコアインフレ率※は直近で2.5%まで下がっています。
※日本では「コアコア」になる。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁からすれば、「余計なことを言いやがって!」でしょう。
記者懇談会では「成太胤(ソン・テユン)政策室長の発言」についても聞かれましたが、李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は以下のように答えています。
「政策室長だけでなく、どの専門家からの意見も、いくらでも聞くのが『韓国銀行』の任務」
「金融通貨委員がさまざまな意見を聞いて、独立的に決定する」
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁の怒りが伝わってくる発言です(笑)。
「誰からの意見も聞くよ、でも金融通貨委員会が独立して決めるけどな」であり、「おめーの意見に従うつもりはねーよ」と一蹴したわけです。
さすが李昌鏞(イ・チャンヨン)さんです。
大統領室の思惑も分からないではありません。基準金利を下げて、景気が良くなる可能性を高めたいのです。次の大統領選挙の前に結果を出すため、です。
ただし、基準金利の上げ下げについては、李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁率いる金融通貨委員会に任せるべきです。何度もいいますが、この人は『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)でアジア・太平洋局長を務めたことのあるマクロ経済の専門家。
経験と識見からいっても、韓国内に李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁に及ぶ人物はいません。
成太胤(ソン・テユン)政策室長は確かに経済の研究者出身ではありますが、経験はあくまで国内の研究者としてのものであって、李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁にははるかに及びません。「政治的な圧力」を掛けるべきではないのです。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は興味深い点も指摘しています。
「韓国の物価」についての構造的な「ヘンさ」です。
確かに『韓国銀行』の読みどおり、韓国のインフレ率は2%台に下がろうとしています。しかし、生活に必須の衣服や一部の食料品(有名な例でいえばリンゴなど)は、主要国より高いインフレ率で値上がりしています(55%高い)。しかし、一方で公共料金は主要国の公共料金は73%水準でとどまっています。
つまり、韓国の物価というのは、実は他国と比較して「なんかヘン」なのです。
公共料金、すなわち電気代やガス代などは、(アメリカ合衆国がダンピングと指摘するとおり)不当に安価に設定してここまできました。また例えば、韓国海苔の価格高騰は、国内消費分まで輸出に回し、その分国内が品薄になったため起こったのです。
これは一例に過ぎません。韓国の物価というのは一筋縄ではいかないのです。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁はこう述べています。
「問題解決のためには、『韓国銀行』単独の努力では難しい。複数の政府省庁間の努力が必要であり、つまりは構造的な問題だ」
「現在の物価水準がどのような構造的要因にあるのかを明確に把握し、望ましい方向に政策が進むための政策提案が必要だ」
全くそのとおりです。
そして、これは成太胤(ソン・テユン)政策室長に対する回答にもなっています。
政府各省庁を取りまとめて構造問題に対処することこそ重要であり、政府に属するお前がリーダーシップを取ってやるべきことだ――と。
(吉田ハンチング@dcp)