2025年07月17日、オーストラリアの『グリフィス大学』グリフィスアジア研究所(Griffith Asia Institute:GAI)と、中国の『復旦大学』グリーンファイナンス開発センター(Green Finance & Development Center:GFDC)による、「一帯一路」についての共同報告が出ました。
「China Belt and Road Initiative (BRI) investment report 2025 H1(2025年上半期 中国一帯一路投資報告)」というリポートです。
冒頭にある「Key findings(主要なポイント)を以下に全文和訳します(面倒な人は次の小見出しまで飛ばしていただいて大丈夫です)。
Key findings
●2025年上半期(2025 H1)は、過去の6か月間で最高の一帯一路(BRI)関連取引額を記録
建設契約が662億ドル、投資額が約571億ドル
※小計:1,233億ドル(この金額は過去最高:引用者注)●2025年の中国によるエネルギー関連取引は、一帯一路開始以来最大
420億ドルに達し、2024年上半期比で100%増加●石油・ガス関連取引は過去最高の約440億ドル
特にナイジェリアにおける石油・ガス処理施設建設契約が200億ドル●グリーンエネルギー関連取引も新記録
風力、太陽光、廃棄物発電プロジェクトで97億ドル
設置容量は約11.9GW●中国は引き続き石炭関連事業にも投資
炭鉱インフラ建設を含む●金属・鉱業分野でも新記録
2025年上半期だけで約249億ドル(これは記録的だった2024年の年間実績を超える)
主に投資と鉱物加工(約100億ドルが鉱業に投入)●技術・製造分野でも過去最高
約232億ドルに達し、太陽光発電、電気自動車用バッテリー、水素事業(ナイジェリア)への高付加価値取引が中心●地域別では、アフリカが390億ドル、中央アジアが250億ドルでトップ
中東を抜いた●2025年のBRI投資は民間企業主導
東方希望集団(East Hope)、新発集団、ロンジグリーンエナジーが主導●2013年の開始以来、BRI関連取引の累計は1兆3,080億ドル
建設契約約7,750億ドル、非金融投資約5,330億ドル●2025年残り期間は、BRI投資の安定化を見込む
再生可能エネルギー、鉱業、新技術分野への注力世界貿易・投資の変動は、中国企業によるサプライチェーン強化と代替輸出市場開拓を促進
●将来の注目分野は以下の6つ
1.新技術製造(例:バッテリー)
2.再生可能エネルギー
3.貿易促進インフラ(パイプライン、道路)
4.ICT(データセンターなど)
5.資源担保型契約(鉱業、石油、ガス)
6.高い注目度または戦略的プロジェクト(鉄道、港湾)
海外投資を拡大する中国の狙いは何か?
「一帯一路」の投資資金は2025年上半期に過去最高の約1,240億ドルとなりました。
習近平さんが自身で「中国よいとこ、投資に最適」などと旗振りを行い、「中国に投資してお金を入れろ」とアピールしているのですが、一方で中国以外に資金を投じているわけです。
今回明らかになった数字をどう読むか――です。
まず過去最大の資金投資から、中国は内需鈍化と米中対立の長期化を背景に、「海外市場への資本投下」を戦略的に拡大していると明確に読み取れます。
資金がエネルギー・鉱業・新技術への集中されていることから、「資源確保+技術覇権狙い」またグローバル・サプライチェーンの主導権確保を狙っていると見えます。
アフリカ「390億ドル」、中央アジア「250億ドル」という投資拡大は、地政学的影響力の拡大を狙ったものと見なければなりません。
中東依存からの脱却と多極化戦略が見て取れます。
まとめれば――、
資源・市場・影響力の三位一体確保
グローバル・サプライチェーン再編の一環
合衆国主導の経済圏に対抗する中国の独自経済圏形成
――といえるでしょう。
この動きはこれからも続くと見られます。
(吉田ハンチング@dcp)







