韓国政府がしつこいのか、韓国メディア『中央日報』が執念を燃やしているのか、2020年03月18日、またしても「アメリカ合衆国との通貨スワップ協定が必要」という記事が出ました。合衆国だけでなく、今度は日本も標的です。
なにせタイトルに「韓米・韓日通貨スワップ締結が最も重要」とあります。先に韓国銀行総裁がそう言っているという記事をご紹介しましたが、今度は世宗(セジョン)大学校経営学部 キム・デジョン教授の言説です。
以下に一部引用します。
キム教授は徹底的に備えなければ通貨危機が再発しかねないとし、「外貨準備高8300億ドル拡大と韓米通貨スワップ締結が必要だ」という主題で2019年8月に韓国経営学会と海外論文などで発表した。
⇒参照:『中央日報(日本語版)』「韓国、新型肺炎で通貨危機の懸念拡大…『韓米・韓日通貨スワップ締結が最も重要』」
https://japanese.joins.com/JArticle/263800
筆者など浅学非才の身ですので、このキム教授がどのような卓見をお持ちの方であるのか分かりませんが、中央日報は昨年の08月の教授が発表した論文を「今になって」引いて、合衆国と通貨スワップ協定を締結すべきと述べているわけです。
もし教授が優れた研究者であり、先見の明をお持ちなのであれば、少なくとも韓国の外貨準備は「4,000億ドル」程度では足りないことをご存じなわけです。あるいは何か内部情報をお持ちなのかもしれません。
また細かいことですが、外貨準備高8300億ドル拡大ではなくて、「外貨準備を8,300億ドルに拡大」だと思われます。つまりキム教授は「韓国の外貨準備を倍にしろ」といっているわけです。その上で合衆国と通貨スワップ協定を結ぶべし、という主張なのでしょう。
しかし、この教授がどこまで優秀な方なのか不明ですが、「外貨準備」というのは国際収支の中で増減するものです。「よし外貨準備を増やそう!」で増えるものではないのです。何を根拠に「倍にできる」と考えていらっしゃるのか不明です。
また、ここのところ何度も触れていますが、合衆国は韓国と通貨スワップ協定を締結する必要が全くありません。いざというときに世界経済(というか自国経済)を安定させなければならないとなれば、ハードカレンシー以外は役に立たないからです。実はユーロや他の通貨より「円」の方が(リスクオフ時の力が:ヘンな表現ですみません)強かったりします。
韓国と通貨スワップ協定を結んでも合衆国はドルを供給させられるだけです。考えてもみてください。合衆国が危機になったとき、韓国の通貨「ウォン」など供給されても役に立つでしょうか? 合衆国が危機になるということは世界的な危機ということです。韓国の通貨「ウォン」を提供されても無意味です。
ですから、合衆国は危機時に役に立つと思われるハードカレンシーを持つ国としかスワップラインを保持していないのです。
韓国には「必要」かもしれません。でも、合衆国にとっては「必要ではない」のです。だからやはり無理スジなのです。
追記
無理スジが通りました。合衆国のFRBは、2020年03月19日「FED(連邦準備銀行)が韓国を含む9カ国と新たなスワップラインを結ぶ」と声明を出しました。上掲で、合衆国が韓国にドルを融通する取り決めを結ばないと断定したことは誤りでした。深くお詫びを申し上げます。誠に申し訳ありませんでした。
このFRBの追加したスワップラインについて以下の記事を制作しました。併せてお読み頂ければ幸いです。
(柏ケミカル@dcp)