韓国企業の経済的苦境は続いています。政府が飛ばすわけにはいかないと慌ただしく支援を決定した企業でも状況は変わっていません。
また、業績悪化の具体的な数字が上がってくるので「事態を悲観的に見る」傾向が強まっています。先にご紹介しましたが、「インドで1台もクルマが売れない」なんて事態を誰が想像したでしょうか?
『大韓航空』に「1.6兆」突っ込こむものの……
2020年04月24日、瀕死の『大韓航空』を救うため、韓国の国策銀行『産業銀行』『輸出入銀行』は以下のような「1.6兆ウォン」の支援パッケージを組みました。
ABS(資産担保証券):7,000億ウォン
運営資金:2,000億ウォン
永久債買取:3,000億ウォン
社債のロールオーバー:4,100億ウォン
計:1兆6,100億ウォン
韓国メディアでしばしば『大韓航空』への支援が「1.2兆」と表記されるのは、「社債のロールオーバー」分を含めていないからです。ロールオーバーというのは「借り換え」のこと。本来であれば『大韓航空』が行わなければならない社債の償還(面倒くさい方は「借金の返済」と考えていただいてOKです)を国策銀行が引き受けるわけです。
支援金の1.6兆でもつのは06月まで!
確かに金額も大きいですし、手厚い支援に見えますが、これでも助かるかどうか分からないのです。
なにせ、『大韓航空』の固定費、毎月の支出は4,000-5,000億ウォンで上記の支援「運営資金:2,000億ウォン」では半月もちませんね。
2020年05月01日、韓国メディア『ソウル経済』に『大韓航空』の資金状況を試算する冷徹な記事が出ました。以下に引用します。
<<05-06月の借金返済>>
社債・銀行借入・金融リース・利子・ABS(資産担保証券)etc:約8,800億ウォン05-06月の固定費(現在の見積もり):6,700億ウォン
小計:1兆5,500億ウォン
国策銀行の支援が「1兆6,100億ウォン」ですから、06月末までは持ちます。しかし、残金「600億ウォン」ですからこれでは「1週間足らずの固定費」にしかなりません。
さらに、これからの支払いが以下のように試算されています。
<<下半期の支出予定>>
下半期に返済しなければならない借金(債務):3兆1,600億ウォン
6カ月の固定費:2兆4,000億ウォン
小計:5兆5,600億ウォン
というわけで、04月24日に決めた「1.6兆の支援」ではもつのは06月までです。
国際航路が再開され、営業が通常回復されるにはまだ時間がかかりそうですので、追加の支援が必要になるのは間違いないでしょう。
『ソウル経済』の記事は以下のように同記事を結んでいます。
(前略)
大韓航空は、ソウル市鍾路区の土地を売却し1兆ウォンの有償増資を行うが、まだ不足している。もちろん航空業が正常化して大韓航空も通常営業を再開するだろうが、将来は不透明だ。金融圏の関係者は「政府が事態の長期化を予想して、戦略的な資金支援計画を用意しなければならない」と助言した。
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による(以下同)
先にもご紹介したとおり、韓国の航空会社はお金をどんどん突っ込まないといけない状況になっています。
こういうのを「money pit(マネーピット)」といいます。直訳すれば「お金を飲み込む穴」ですが、「金食い虫」「お金をいくら突っ込んでも足らない底なし沼」のことです。
ちなみにトム・ハンクス主演の『The Money Pit』は傑作コメディーです。未見の方はぜひご覧ください。とても笑える、でも最後は心が温かくなるいい映画です。
⇒参照・データ引用元:『ソウル経済』「[뒷북금융]항공업 회복 2~3년 걸린다는데…대한항공·아시아나를 어찌할꼬」
(柏ケミカル@dcp)