韓国で、2021年05月17日、洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官主催で「対外経済長官会議」が開催され、「アメリカ合衆国バイデン政権の経済政策の点検と示唆する点」についてが話し合われました。
という見解が出たとのこと。
至極当然の話で、韓国政府が懸念するのは当然です。韓国では家計負債が最大限に膨らんでいますので、ここで金利が上がると家計に甚大な影響を与えます。
急激な金利上昇は困る!
ここまでお金じゃぶじゃぶで流動性を高めてきたので仕方ないのですが、お金が大量に増加すると相対的に物の価値が上がります。つまり、インフレに振れます。
適度なインフレなら良いのですが、これが過度な場合には、お金の量を減らして相対的にお金の価値を高める必要があります。みんながお金を使わないようにしなければなりません。金利を上げると、企業は返済額が増えるので投資を控え、個人では住宅ローンを組むのをためらい……などでお金を抑止できます。
しかし、金利が上がると、当然ながら融資の際の金利も上昇します。韓国では変動金利でお金を借りている人が多いのです(2020年11月時点で対家計融資における変動金利の割合は「68.9%」)。
ですので、金利が上昇すると、銀行から融資を受けている人の借金返済額が増えます。これが余りに増大すると支払えない人が増加します。これは大変危険です。また、インフレを避けようと手を打つことは、物の価値を相対的に下げようという話ですから、資産価値が下落します。
韓国では、お金じゃぶじゃぶでその資金が株式・不動産・暗号資産(韓国当局は「仮想資産」などと呼んで蔑んでいます)などを膨らませてきました。これが下落に向かうと大変なことになります。投げ売りが起こると下方圧力が雪崩現象を起こすでしょう。
ですので、急激に金利が上がると韓国経済に与える被害は甚大なものになるかもしれないのです。韓国政府が注意するのも当然です。
幸いなことに、現合衆国の財務長官はイエレンさん(ジャネット・ルイーズ・イエレン:Janet Louise Yellen)※。
先にご紹介したことがありますが、イエレンさんはFRB(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)議長のときに、極めて慎重に金利を上昇させて合衆国経済を見事に導いた経験をお持ちです。今回は『FRB』を政府側から見る立場ですが、イエレンさんほどの切れ者ですから、任せておけば大丈夫……のはずです。
また、FRB(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)もインフレは一時的なもの(突破ツテ的に起こったとしても継続されるものではないとしている)で、金融緩和の施策は当分変更するつもりはないとしています。
しかしながら、先のように金利の急騰が起こる可能性はあり、これがあると、瞬間的なものであったとしても韓国は非常にドタバタします。ですので、洪長官も会議を開催したというわけです。
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イエレンさんて、こんな人
イエレンさんは、どこにでもいそうな感じのいいおばさん(失礼!)に見えますが、さすがFRB議長に選ばれるだけあって非常に聡明な方で、アダム・スミス賞を受賞する(2010年)ほどの才媛です。
1946年生まれで、1971年にイェール大学でPh.Dを獲得し、1976年ハーバード大学で経済学部の助教授を勤めたのを皮切りに、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの講師、カリフォルニア大学バークレー校のハース・ビジネススクールの教授などのキャリアを積み、1994年(-1997年)には連邦準備制度理事会の理事となっています。
もっとも1977-1978年(31-32歳のとき)に連邦準備制度理事会でエコノミストとして働いた経験がありますので、若いうちからFRBとは縁があったわけです。
2010-2014年、イエレンさんは連邦準備制度理事会の副議長となり、当時の議長であったバーナンキさんを支えました。リーマンショックに端を発する金融危機に際して、金融緩和政策に尽力。2014年からはFRB議長です。特に金融緩和の舵取りについては高く評価されています。
ちなみに、旦那さんのジョージ・アカロフ(ジョージ・アーサー・マカロフ:George Arthur Akerlof)さんも優秀な経済学者。2001年にはノーベル経済学賞を受賞しています。
(吉田ハンチング@dcp)