2021年12月13日、韓国企画財政部は「第226回 対外経済大臣会」を開催。あの洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官も参加しての会議でした。
「公式の加盟申請」はまだ
『CPTTP』※に参加を申請するかどうかが議題に上がりました。以下が企画財政部が出した本日の会議のプレスリリースです。
本日の会議では➊『CPTPP』加入関連の今後の推進計画、➋主要国とのFTA推進現状の点検および対応方案(書面)➌最近のグローバル経済・通常主要イシューおよび対応(GVCイシュー、国際環境/雇用イシュー等)➍今年の海外輸出動向の確認と今後の輸出支援の補完方案を想定・議論することに着手したい。
これまで政府は通常ネットワーク拡大のため『CPTPP』関連国内制度整備*などを着実に進めてきた。
*①水産補助金、②デジタル通商(‘21.3.15、第221次)/③国営企業、④衛生検疫(‘21.7) .5、第223回)最近、中国、台湾が『CPTPP』加入を申請。世界最大のメガFTAである『RCEP』の発効(2022年初頭)などアジア太平洋地域内経済秩序変化が活発に展開されており、これ以上『CPTPP』加入に関しては政府省庁間議論だけにとどめるのは難しい状況。
貿易・投資拡大を通じた経済的・戦略的価値、私たちの開放的な通商国家としての位相などを総合的に考慮し、『CPTPP』加入を本格的に推進するためにさまざまな利害関係者との社会的議論を基に関連手続きを開始。
併せてメキシコ、GCC(湾岸経済協力理事会)など主要国とのFTA再開なども綿密に準備する。
⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「第226回対外経済大臣会の開催」
韓国メディア、日本語メディアでは、「韓国が『CPTTP』加盟を本格的に推進」といった報じられ方になっていますが、少なくともこのリリースを見る限り、「これ以上政府の省庁間で話していても埒があかない」ので、加盟を推進するために「これまでの議論を基に手続きを開始」というのが本日の結論のようです。
つまり、本日の会議をもって「公式に加盟申請を表明」というには力強さに欠けます。その証拠に、すでに『CPTTP』に加盟しているメキシコとFTA締結に向けて交渉を再開する――と書いてあります。
これなど『CPTTP』加盟を蹴られたときの保険ともいえます。
ですので、韓国政府は『CPTTP』加盟を本格推進したいけれども、どこかまだ及び腰という態度に見えます。その及び腰の理由が日本にあることは言うまでもありません。
韓国にとって日本が不安材料
まず、加盟国1国でも反対したら参加できないという建て付けになっているので、「日本が反対するのではないか」と懸念しているのです。「日本が反対するかもしれないこと」をさすがに韓国も理解しています。
しかし反対表明よりも、韓国は「対日赤字が拡大するのではないか」と恐れています。以下は直近10年間の対日赤字金額の推移です。
※『日本国 財務省』のデータを基にMoney1でグラフ化しました
2019年には例の「NoJapan運動」があったため、対日赤字は「192億ドル」まで減りましたが、コロナ禍の中でも赤字は拡大し、2020年には「209億ドル」となりました。
Money1では何度もご紹介していますが、上掲のとおり韓国は対日本貿易で1988年以降1年足りとも黒字になったことがありません。グラフにすると常に金額はゼロの下にあります。
仮に『CPTTP』に加盟できたとして、この赤字が拡大するのではないかと恐れているのです。
もちろん赤字は拡大します。『CPTTP』は質の高い自由貿易を標榜しているので、韓国が日本製品(農業水産物含む)に対して課している関税、差別的な措置を撤廃しなければなりません。
そうなると日本製品が韓国市場でより多くのシェアを持つことになるでしょう。そもそも日本とのFTA締結を忌避しておいて、『CPTTP』なら入りたいというのは自己矛盾です。
少なくとも加盟申請を公式に発表するには「対日赤字が拡大してもいい」という覚悟が必要なのです。まだその覚悟ができていないと見ることが可能です。
「臆したな洪長官!」という感じでしょうか。
※『CPTTP』は「Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership」の略で「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」。
(吉田ハンチング@dcp)