日韓関係を決定的に壊すのみならず、韓国経済にも大きな影響を与えそうな「いわゆる徴用工判決」の行方。
『共同通信』などによれば、2022年01月12日、『日本製鉄』は大邱地裁浦項支部の資産売却命令を不服とし、即時抗告したとのこと。
2021年12月30日、同地裁は『日本製鉄』の韓国内資産であるPNRの株式について売却命令を出しました。しかし、これは日韓請求協定に明らかに違反する判決であり、司法でありながら国際法を順守しておりません。このような不当な判決には従う必要はありませんし、資産売却が行われたら当然反撃するべきです。
日本政府は「日本企業の資産が実際に売却されたら対抗措置を取らざるを得ない」と既に表明しており、売却はそのまま日本措置による韓国への対抗措置発動につながるでしょう。
今度こそ本当の意味で「制裁措置」です。
では、どのような対抗措置があり得るでしょうか。
麻生閣下はなんといったか
同様に、日本で韓国への反感が高まった2019年03月、衆議院財務金融委員会で、丸山穂高議員が「具体的に対抗措置を前に進めるべきではないか?」と質問し、当時の麻生財務相は以下のように答えています。
「関税に限らず、送金の停止、ビザの発給停止とか、対抗措置にはいろんな方法がある」
「関税」というのは、「関税の引き上げ」を短縮した発言でしょう。
どこまでの税率で何に関税をかけるのかによりますが、韓国産の製品に対して関税を追加賦課することは韓国にとっては痛手になります。
ただし、この場合、韓国は対抗して日本製品に対する関税を上げる可能性があり、関税の賦課合戦に陥るかもしれません。そうなると、韓国は日本にしかない素材・部品・装備などを、追加関税を賦課された価格で買わなければならないことになって困るでしょう。
類似した状況がかつてありました。アメリカ合衆国が日本の鉄鋼に対して追加関税を賦課したのですが、日本にしか作れない特殊鋼の価格が上がり、合衆国の企業が困ってしまったのです。
関税の賦課合戦になった場合、韓国政府が行いそうなのは半導体関連素材だけはこっそり関税を賦課しないという措置です。しかし、これが発覚した場合、韓国政府はメディアから「弱腰」と叩かれることになるでしょう。
ビザの発給停止は、コロナ禍の現在、すでに事実上そうなっています。ですので、このプランが実行されてもあまり意味はないでしょう。
ただし、地味に見えるこのプランは、実はボディブローのように韓国には効きます。というのは、日本から韓国に輸出された製造機械などはメンテにも技術が必要で、ビジネスマンが行き来できないと困ったことになるのです。
韓国からしばしば「日本はビジネスの往来においてビザ発給を緩和すべき」といった要請が来るのはそのような理由があるからなのです。
『夕刊フジ』による「10の制裁」予想
いろんな対抗措置が予想されますが、例えば2019年03月13日付けの記事で日本の『夕刊フジ』は以下のような韓国への制裁案を予想しています。
【予想される日本政府による韓国への制裁案】
(1)国際司法裁判所(ICJ)への提訴
(2)韓国人の入国ビザの差し止めを含めた厳格化
(3)韓国製品の関税上乗せ
(4)送金停止
(5)貿易保険の適用から韓国を外すなどの輸出規制
(6)環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への韓国の参加申請拒絶
(7)日本国内の韓国企業の資産差し押さえ
(8)日本からの部品・素材提供の停止(フッ化水素など)
(9)長嶺安政駐韓日本大使の帰国
(10)国交断絶⇒参照・引用元:『夕刊フジ』「麻生財務相“報復措置”明言で韓国は戦々恐々 韓国紙『局長会談の結果は楽観できないという見方も』 」
(8)日本からの部品・素材提供の停止(フッ化水素など)は、この記事から4カ月後、実際に「フッ化水素」「フッ化ポリミイド」「フォトレジスト」の3品目の輸出管理強化となって実現しました。ただし、もちろんこれは判決とは関係ありません。韓国のそれまでの輸出管理に対する態度がずさんだったから発動された措置です。
しかし、韓国の半導体をターゲットにした対抗措置は非常に効くことが、この輸出管理強化によって判明しています。
半導体、金融面を狙うのが効果的
韓国は徐々に半導体依存を強めていますので、その大本を狙うのは日本にとってはよい戦術です。半導体産業(というよりメモリー半導体産業)が傾いたら国が傾くからです。
上掲は先にご紹介した、韓国の半導体産業がその素材をどのくらい日本に依存しているのかを示す表組です。韓国は素材の38.5%を日本に依存しており、そのため日本から素材が輸入できなくなると韓国の半導体産業は大変困ったことになるでしょう。
親中国色を強めているのを苦々しく思っているアメリカ合衆国の了解を得て、金融面での締め上げも効果があるでしょう。具体的には韓国の貿易への保証をやめるのです。また、融資の停止、ロールオーバー(借り換え)の拒否も効果が見込めます。
ロールオーバーの拒否は1997年のアジア通貨危機の記憶を呼び覚ますので良い手かもしれません。
さらに、日本が韓国に制裁措置を発動するとなると、韓国の通貨ウォンが通貨安方向に進行するでしょう。以下をご覧ください(チャートは『Investing.com』より引用:月足)。
韓国への輸出管理強化が発動した2019年07月、ウォンは通貨安方向に向かいました。日本ともめると外国が韓国に駄目を出して韓国から資金を引き上げる可能性が高く、そうなるとウォンを外貨に換えて引き上げますのでウォン安が進行すると思われます。
韓国は日本に甘えてこのような態度を取っているので、毅然とした対応をしなければなりません。いざ対抗措置発動となった際に、日本政府がどのような選択するのかに注目いたしましょう。
(吉田ハンチング@dcp)