国のエネルギーインフラ事業を外国に握られるとロクでもないことになります。
国民の生活を外国が脅かすことができるようになるからです。韓国でそのような事態が進行していることが分かりました。
事は、Money1でもかつてご紹介したことのある前文在寅政権が進めた「セマングム洋上風力発電施設」についてです。
この洋上風力発電施設のうち約8万坪分についての事業権が中国企業の手に渡る寸前だということが判明したのです。
S教授の孤軍奮闘が文在寅登場で風向き変わる!
話は過去に飛んでちょっとややこしくなります。
そもそもは、2015年に『全北大学』のS教授が2015年に洋上風力発電事業を推進するための『株式会社セマングム海上風力』という会社を設立したことに始まります。
同社は、『海洋エネルギー技術院』が51%、S教授が49%の株式を保有しています。ところが、この『海洋エネルギー技術院』もS教授とその家族が持ち分を保有しているのです。
ということは、『株式会社セマングム海上風力』は実質的にはS教授とその家族が保有しているわけです。
2015年12月、この会社に最初の発電事業の認可が与えられました。
しかし、朴槿恵(パク・クネ)政権時代には再生可能エネルギー事業についてはほとんど注目が集まらず、投資対象などではありませんでした。つまり、『株式会社セマングム海上風力』は当初は誰も鼻も引っ掛けない会社だったのです。
ところが、「脱原発」「クリーンエネルギー政策」を看板に掲げた文在寅さんが大統領に当選してから180度風向きが変わります。
大統領政策室(文政権になって新設された)が直々に乗り出して「セマングム風力発電施設はいいじゃないか!」と取り組むことになったのです。
SPCを設立して丸もうけまでの急転直下!
S教授は、2021年09月にSPC(特別目的会社)として『ザ・ジオディ』を設立。設立資金は1,000万ウォン(約100万円)です。同じくS教授とその家族が株主です。
で、SPC『ザ・ジオディ』に『株式会社セマングム海上風力』が保有する事業権をまるっと譲渡したのです。
ちなみにSPC、すなわち「Special Purpose Company:特別目的会社」というのは、資産を保有するために設ける会社です。
その2カ月後、産業通商資源部がこの譲渡について認可します。
ここからが急転直下です。
2022年06月、『ザ・ジオディ』(要はS教授)は、株式持ち分の84%をタイの企業『チョド風力発電』に5,000万ドル(約72億450万円)で売却する契約を結びました。
ところが、この『チョド風力発電』は中国系の『ユニーチョド』という会社が100%出資した子会社。『ユニーチョド』は『レナ』という会社の100%子会社でした。。『レナ』の代表者は中国国営企業である『国家能源集団』(チャイナ・エナジー・グループ)の韓国支社長なのです。
出資関係・支配権からいって、「セマングム風力発電施設」の中の約8万坪の風力発電の事業権が実質的に中国企業の手に渡ることとなります。
現在のステータスは、産業通商資源部がこの譲渡を最終承認するのを残すのみです。
韓国S教授「72億円丸もうけ」にまつわる疑惑
事は事業権の問題だけではありません。
『全北大』のS教授です。
100万円で設立した『ザ・ジオディ』の株式の84%(原価84万円)を約72億450万円で売却したわけですから、72億円以上を丸儲けです。
しかも、このS教授は、大統領直属の「国家均衡発展委員会」の会合、文政権時の政府与党『共に民主党』の新再生エネルギー特別委員会の討論などに出ては、「洋上風力発電の付加価値は大きい」「許認可の簡素化が必要」などと述べてきたのです。
マッチポンプというか、ストレートな利益誘導です。自分が支配権を持つ会社に有利に働くよう、政府機関に働きかけたのです。
また、このS教授だけで話が済んでいるとはとうてい考えられません。S教授の家族のみならず、宗族や政府関連機関にお金が回っていないのかを調査する必要があるのではないでしょうか。
そもそも『全北大学校』というのはれっきとした韓国の国立大学です。国立大学の教授が自分の保有する会社への利益誘導を政府機関の委員会を利用して行っており、結局中国の企業に(事実上)譲渡権を巨額で売却に至るというのは――あまりにもモラルに欠けた話ではないでしょうか。
Money1では何度も文在寅政権のエネルギーインフラ政策が支離滅裂でいい加減なものであることをご紹介してきましたが、このような魑魅魍魎の類いの跋扈も許していたのです。
実に韓国らしいエピソードの一つかもしれません。
日本も全く他人事ではなく、監視の目を強めなければなりません。水源やエネルギーインフラなど、国民生活の根幹に関わる部分は外国企業に支配されることのないように注意が必要です。
ともあれ、産業通商資源部が「事業権」譲渡の最終承認を行うかどうかにご注目ください。
(吉田ハンチング@dcp)