韓国の経常収支を圧迫する結果が出てきました。しかし、これは予定どおりです。
コロナ禍で助かったことがあるとしたら……
コロナ禍がようやく一段落して、人の移動が緩和される方向となっています。韓国の場合、これは経常収支を圧迫する方向です。なぜかというと――。
・サービス収支
・第1次所得収支
・第2次所得収支
経常収支(上記4つの合計)
もともと韓国の経常収支の構造は、貿易収支が大きな黒字、サービス収支が赤字、第1次所得収支は小さな黒字、第2次所得収支は小さな赤字というものでした。
しかし、コロナ禍によって人の移動が極端に絞られたため、サービス収支の赤字を抑えることができていたのです。海外旅行に行って現地でお金を使うといったことがなくなったからです。
国際収支統計から「サービス収支」の部分だけ切り出して、推移を見ると以下のようになります。
⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「ECOS」
上掲のとおり、2011~2021年、韓国のサービス収支はずっと赤字です。ご注目いただきたいのは、韓国で日本旅行が一大ブームになっていた2015~2017年にかけての赤字の進み具合です。
※ただしサービス収支は旅行収支だけではないので日本旅行がブームになったのはサービス収支赤字の一つの要因です。
2017年にはなんと「-367.3億ドル」もの赤字です。2019年には日本の輸出管理強化によって「NoJapan運動」が起こり、「-268.5億ドル」まで減少。
これが、コロナ禍が始まった2020年には「-146.7億ドル」まで赤字が減少。2021年には一桁減の「-31.1億ドル」まで縮小しました。
万年赤字のサービス収支がここまで縮小したことは、韓国にとって「助かった」なのです。その分経常収支が黒字化したわけですから。
コロナ禍が韓国経済に良い影響を与えたとしたら、この「サービス収支の赤字減」を挙げなければならないでしょう。
しかし……。
経常収支を押し下げる方向です
……さあ韓国の皆さんが海外でお金を使うようになってきましたよ――です。
読者の皆さんもご存じのとおり、この円安もあって韓国では日本旅行に出かける人が急増しています。
韓国メディアにもそれを憂う(?)ような記事が出ています。『韓国経済』の記事から一部を引用すると以下のような具合です。
(前略)
20日、『韓国銀行』経済統計システム(これが「ECOS」:引用者注)によると、韓国人が海外で消費した支出規模を示す居住者消費支出規模は今年上半期5兆9,378億ウォンとなった。これは昨年同じ期間(5兆4,309億ウォン)と比較すると9.3%増えた数値だ。
去る第2四半期だけで3兆1,687億ウォンで、対前四半期(2兆7,691億ウォン)比14.4%拡大した。
コロナ19が本格的に拡散した2020年第2四半期以降、四半期基準で初めて3兆ウォンを記録した。
外国人が韓国内で消費した支出規模を示す非居住者の国内消費支出は今年上半期3兆5,858億ウォンで、昨年同期より18.8%増えた。
四半期ごとに見ると、今年第1四半期1兆2,592億ウォン、第2四半期1兆5,016億ウォンで19.2%増加した。
(後略)
伸び率でいうと、外国人が韓国内で使うお金の方が増えているのですが、
韓国人が外国で使ったお金:5兆9,378億ウォン
外国人が韓国で使ったお金:3兆5,858億ウォン
です。この差がまさに収支になるので、これだけ見ても「収入:約3.6兆ウォン」「支出:約5.9兆ウォン」なので「約-2.3兆ウォン」です。
これは上半期の結果で、読者の皆さんもご存じのとおり10月以降に韓国から日本への旅行者が急増しています。日本政府が2022年10月11日から短期滞在ビザ(査証)免除や外国人の個人旅行の受け入れ解禁を行ったためです。
これにより収支はさらに悪化することが見込まれます。さらに悪いことには、韓国の貿易収支は(国際収支統計において)10月に再び赤転する可能性があります。サービス収支の悪化があれば、経常収支の赤転があり得ます。
韓国にとって残念な話ですが、コロナ禍から抜け出すことによって経常収支の悪化を視野に入れなければならないのです。
韓国政府や観光機関が「韓国よいとこ一度はおいで」といったキャンペーンを張っているのは、サービス収支の赤字を減らしたいため、とも考えられるのです。
逆に、円安効果で外国人の皆さんが引きも切らず訪日していらっしゃるので、日本のサービス収支を押し上げる結果になります。助かりますね。
(吉田ハンチング@dcp)