半年ぐらい前から、韓国メディアでも「これってさあ……」と指摘されてきた件です。
韓国は政府・企業・家計の3部門共に借金を積み上げるばかりで、負債まみれになっています。
別に借金が悪いわけではありません。
政府がお金を借りて民間に流せば景気対策ですし、企業がお金を借りて投資しないと将来の発展はありません。家計部門でも、住宅ローンを借りて家を購入すれば、資産になりますし、何よりこれは消費で、売上は不動産会社の売上になりますね。
要は程度の問題。誰かの借金は誰かの売上だからです。いささかMMT的な物言いになりますが、結局のところ、そのお金がでどこから出て、どこに行ったのか――が問題なのです。
韓国の負債の積み上げは「やり過ぎ」!
しかし韓国の場合には、『BIS』が指摘するとおり、負債の増加が経済成長を生じさせない「負債増えすぎ状態」に陥っていることが懸念されます(以下を参照)。
「融資が増加するにつれて、経済成長率への寄与度は低下する低下する傾向にあり、ある点を超えるとマイナスに転じて、むしろ成長を阻害する」のです。
今回ご紹介するのは、韓国が陥っている構造的な欠陥についてです。
Money1でもご紹介しててきた「政府による負債の救済」――公的機関が提供する「代位弁済システム」です。
まず、借り主による債務調整申請件数が爆増しています。
2023年:18万5,000件
となりました。これは、カード大乱後の、
2004年:28万7,000件
2005年:19万4,000件
に次ぐ規模です。
韓国の皆さんが「クレジットカードってお金がどんどん湧いて出る打出の小槌みたい」と踊り狂ってひどい目に遭った、あの「カード大乱」後の惨状に次ぐ債務調整規模です。
いかにお金を借り倒して二進も三進もいかなくなっているのかが分かります。
具体的なカードローン規模も、
2024年08月末時点:44兆6,650億ウォン
に達しており、これまた2003年以降で最大規模なのです。
――で、代位弁済に戻ります。
この代位弁済システムは、借り手が返済できなかった元利払いについて、いったん公的機関が弁済を引き受け、債務支払いを「リスケ」する役割を果たします。
同じく08月末時点で「政策庶民金融商品」の代位弁済金額は1兆551億ウォンと集計されました。借り手が困窮し「もう駄目」と代位弁済申請が増加すればするほど(現在ココ)、公的機関が引き受ける金額も大きくなります。
何が行われているかというと、借り手の債務を政府が返済しているわけです。家計負債の政府負債への付け替えです。
冒頭でご紹介したとおり、韓国メディアも「これってさあ……」と書くようになっています。
――そう、大問題です。
代位弁済システムの限界が来ると……
問題点は以下の3つに整理することができます。
家計債務の過剰膨張
韓国はすでに家計債務が国内総生産(GDP)に対して非常に高い割合を占めており、世界的にも高水準です。
家計の負債が増え続ける中で、公的機関が代位弁済を行うことで、個人の債務問題が国家財政に直接影響を与えるようになっています。これは、長期的に見て政府の財政負担を増加させる懸念があります。
●道徳的リスク(モラルハザード)
債務者が「政府が最終的に支払ってくれる」という認識を持つと、モラルハザードが生じる可能性があります。
これにより、債務者が無責任に借金を増やし、最終的に返済能力を超える債務を抱えるリスクが増大します。この傾向が拡大すると、さらに多くの人々が支援を必要とし、制度が持続可能でなくなる可能性があります。
●債務支援制度の限界
韓国政府はこれまで、経済的困窮者を支援するために政策金融商品を導入してきましたが、その支援額が増大し続けていることから、現行の制度では根本的な解決が難しいという指摘があります。
特に低所得者層にとって、短期的な融資支援は助けとなるものの、長期的に見れば返済不能に陥るリスクが高まり続けています。いつかは決壊するダムに水をため続けているようなものです。
まあ韓国の皆さんが考えることなので、知ったことではありませんが、現在も韓国の家計は「政府が引き受ける」という甘い目算で負債を積み上げ続けているのです。
(吉田ハンチング@dcp)