2024年12月10日、中国の習近平さんが、国際経済機関のTopとの会談を行いました。
中国の商務部が出したプレスリリースを以下に全文和訳します(面倒くさい方は強調文字に部分だけ斜め読みして飛ばしてください)。
習近平氏、以下の発言を行う
現在、百年に一度の変局が加速しており、世界は新たな混乱と変革の時代に突入し、再び重要な分岐点に立っています。人類は運命を共有する共同体であり、各国は190隻以上の小舟に乗っているのではなく、一つの運命を共にする大きな船に乗っているのです。
各国は相互に他国の発展を挑戦ではなく機会と見なし、他国を対手ではなくパートナーと見なすべきです。
そして「共存共栄」や団結協力、互恵共栄を時代の主旋律とするべきです。
中国は主要な国際経済機関と共に多国間主義を実践し、国際協力を促進し、グローバルサウス(発展途上国)の発展を支援し、平等で秩序ある世界の多極化、包摂的な経済のグローバル化を推進し、公正な共同発展の世界を構築することを願っています。
『新開発銀行』総裁のジルマ・ルセフ氏、『国際通貨基金』(IMF)総裁のクリスタリナ・ゲオルギエバ氏、『世界銀行』総裁のアジェイ・バンガ氏、『世界貿易機関』(WTO)事務局長のンゴジ・オコンジョ=イウェアラ氏が発言
これらの代表は中国の経済発展の成果を高く評価し、中国の未来に期待を示しました。
また、長年にわたる中国の国際経済機関への支援に感謝を表明しました。
彼らは「中国の発展成果は世界の注目を集めており、特に貧困削減分野では人類史上の奇跡を成し遂げた」と述べました。
また、新たな質の高い生産力の分野で世界の最前線に立っているとし、中国政府が掲げる「人民中心」の発展理念が成功しており、世界に重要な示唆を与えていると評価しました。
中国は常に世界経済成長の重要なエンジンであり、安定の錨として、多国間主義を堅持する存在です。
中国が継続的に改革を全面的に深化させ、対外開放を拡大し、高品質の発展を実現していることは、世界、特にグローバルサウスの国々に巨大な機会を提供しています。
習近平国家主席が提唱した「一帯一路」イニシアチブや三大全球イニシアチブは、中国が責任ある大国としての役割を果たし、グローバルサウスの国々に中国の成長という特急列車に乗るための重要なプラットフォームを提供していることを示しています。
習近平氏の応答
習近平氏は、世界経済、中国経済、グローバル経済ガバナンスなど、外部代表が関心を寄せる問題について丁寧に回答しました。また、次のように述べました。「どのようにして世界経済を強力かつ持続可能な成長軌道に乗せるかは、国際社会が直面する重要課題です。各国の経済にはそれぞれ困難があるため、協力して開放型の世界経済体系を構築する必要があります。
イノベーション主導を堅持し、デジタル経済、人工知能(AI)、低炭素技術などの重要な機会を捉え、新たな経済成長の原動力を生み出し、知識、技術、人材の国際的な流動を支援するべきです。
“小さな庭に高い塀”を築き、“デカップリングやサプライチェーンの分断”を行うことは、他者を損ねるだけでなく自分にも不利益をもたらします。
中国が良ければ世界も良くなり、世界が良ければ中国もより良くなる、というのが中方の一貫した考えです。各国は経済的な相互依存をリスクではなく、互いに補い合い、共に利益を得る好ましいこととみなすべきです」
中国の政策紹介
習近平氏は、中国共産党第20回全国代表大会第3回全体会議の重要事項を紹介し、特に最近中国が打ち出した一連の重要措置について説明しました。40年以上の急速な発展を経て、中国経済はすでに高品質発展の段階に入り、世界経済成長への寄与率は約30%を維持しています。
今年の経済成長目標を達成する自信を十分に持ち、引き続き世界経済成長の最大のエンジンとしての役割を果たします。
また、中国の発展は開放的かつ包摂的であり、今後も対外開放を拡大し、国際的な高水準の経済・貿易ルールに積極的に対応し、市場化、法治化、国際化された一流のビジネス環境を構築し、より高水準の開放型経済体制を構築することで、各国により多くの新しい機会と発展の利益を提供します。
「一帯一路」イニシアチブの進展と展望
習近平氏は、「一帯一路」構想が提案されてからの10年間の積極的な進展を紹介し、中国が実行力を持った行動派として、このイニシアチブを着実に推進していることを強調しました。また、国際経済機関に対し、「一帯一路」構築への積極的な参加を引き続き歓迎すると述べ、平和な発展、互恵的な協力、共同繁栄を推進し、各国の現代化を実現するための世界的な橋を築くことを呼びかけました。
グローバル経済ガバナンスに関する発言
習近平氏は、世界経済の成長を促進するには効果的で積極的なグローバル経済ガバナンスが必要であると強調しました。国際経済機関は時代の呼び声と世界の人々の期待に応え、グローバル経済ガバナンスの体系改革に積極的に参加し、より公正で合理的なガバナンス体系を構築するべきだと述べました。
また、世界経済の格局変化を反映し、グローバルサウス諸国の代表性と発言権を強化すべきだと訴えました。
グローバル経済ガバナンスの改革には、「協議・共同建設・共有」の原則を堅持し、真の多国間主義を追求する必要があります。すべての国が権利、機会、ルールの平等を享受できるようにすべきです。
米中関係に関する姿勢
習近平氏は、米中関係に対する中国の一貫した原則的立場を説明し、アメリカ合衆国政府と対話を維持し、協力を拡大し、対立を管理し、米中関係を安定し、健全で持続可能な方向へ発展させることを望むと述べました。関税戦争、貿易戦争、技術戦争は歴史の潮流や経済法則に反しており、勝者はいないと強調しました。中国は引き続き自国の発展に力を注ぎ、主権、安全、発展の利益を堅持します。同時に、高水準の対外開放を推進する決意は変わりません。
※『新開発銀行』だけ、あまり聞き慣れない機関かもしれません。この『New Development Bank』(略称「NDB」) は、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)によって2014年に設立された国際金融機関です。
スゴいのは、『新開発銀行』『IMF』『世界銀行』『WTO』Topの皆さんが、
「中国の発展成果は世界の注目を集めており、特に貧困削減分野では人類史上の奇跡を成し遂げた」
――などと述べたことになっていることです。また、
「新たな質の高い生産力の分野で世界の最前線に立っているとし、中国政府が掲げる「人民中心」の発展理念が成功しており、世界に重要な示唆を与えていると評価した」
――ことになっています。
本当にそんなこと言ったのか?です。
習近平さんがこんなことを行ったのは、もちろん来るトランプ政権への牽制です。「中国は世界経済の発展に寄与していますよ」とウソをいうためです。
「関税戦争、貿易戦争、技術戦争は歴史の潮流や経済法則に反しており、勝者はいないと強調しました」の箇所には、中国側の怯えを感じさせます。トランプ大統領が再登板すると困ることになる――と熟知しているのです。
へい、キンペーびびってるよ!――です。
しかも発言は間違っています。「関税戦争、貿易戦争、技術戦争」に勝者はいます。それが合衆国になるために、トランプさんは大統領になるのです。
(吉田ハンチング@dcp)