「これだけ企業に圧力を掛けているのに賃金を上げようとしやがらん。ぐぬぬ」と政府が歯ぎしりをしていそうな昨今です。「金曜日を半ドンに」の「プレミアムフライデー」運動もそうですが、とにかく消費を活発にして物価を上げたいわけです。賃金が上がると消費活動も盛んになりますしね。ところが全くそうはなってない。
ロイターに竹中正治先生(龍谷大学経済学部教授)の非常に実証的な面白い記事が上がっていたので、ご紹介します。ぜひ皆さんにも読んでいただきたいところです。
⇒『ロイター』「日本経済、低インフレから脱却なるか」
http://jp.reuters.com/article/column-masaharu-takenaka-idJPKBN18Q049?pageNumber=1
景気回復がうまく進むためには低インフレから脱却して「マイルドなインフレ」が必要なわけです。で、現状として企業の業績も悪くなく、皆さんもご存じのとおり、雇用も良くなっている。ですが! 労働者の賃金の上昇は抑制されているのが現状です。
竹中先生は、賃金と物価の関係について非常に興味深い指摘をされています。
「賃金と物価の関係は1980年代までさかのぼると非常に高い正の相関関係があるのだが、1990年代末以降は関係性が非常に弱まっていることがわかった」
のです。かつては物価が上昇する局面では賃金も上昇しているのが普通だったのですが、1990年代末以降ではそうなっていないのです。
なぜかといいますと、かつて賃上げ交渉は「消費者物価の上昇率」にプラスアルファして行われていました。「物価がこれだけ上がっているから、その分は上げてもらわないと暮らしていけねーよ」というわけです。
ところが、1990年代末期になりますと、バブルの崩壊もあって賃上げはその企業の業績次第というように変化します。金融危機と不景気によって賃上げよりも正規社員の雇用を維持することの方が大事、という時代に突入してしまったのです。そのため賃金と物価の相関関係が薄れたというわけです。そしてこの傾向は今も続いているのです。
ですから、かつてのように「賃金上げたから物価も上がるだろう」というのは早計に過ぎると考えるべきなのかもしれません。ただし、賃金を上げるとその分消費活動が活発になるというのは当然すぎる考え方です。実際企業がドーンと賃金を上げれば、政府が目論んでいるマイルドなインフレを達成できる……かもしれません。
経済政策というのは、ここが難儀なところで、アタマの中で考えているうちはうまくいくようでも、実際にやってみると「アレっ!?」なんてことが往々にしてある、のです。失敗したら取り返しがつかいのも厄介な点です。他の科学みたいに実験ができないですからね。
すみません。この項続きます。
(高橋モータース@dcp)