2021年06月16日(現地時間)、アメリカ合衆国のFRB(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)は、韓国ほか計9カ国の中央銀行との「ドル流動性スワップ」※の延長を発表しました。
これを受けて『韓国銀行』も「延長」を知らせるプレスリリースを出しています。
この中に興味深い部分がありますのでご紹介します。
「ちゃんと返したからね!」
2020年03月、韓国がまさにドボンになる寸前のときに、FRBが「ドル流動性スワップ」の拡大を発表。これを受けての部分です。
●外貨部門が安定の様子を見せるに応じて、2020年7月30日に通貨スワップ資金を全額返済し、現在返済残高はありません
『韓国銀行』はドル流動性スワップによってFED(Federal Reserve Systemの略称:連邦準備制度)から(フロントエンドは『NY連邦銀行』)、6回に分けて約200億ドルを調達。
前回の2008-2009年の「韓国通貨危機」時には利用金額は「約164億ドル」でしたので、コロナ危機では利用額が増えたわけです。
Money1でもかつてご紹介しましたが、借りた約200億ドルは今回のリリースにあるとおり完済されています。
ネット上では、契約自体の延長を返済期限の延期と誤解して「韓国は踏み倒すつもりだ」という方がいらっしゃいますが、それは違います。
韓国は2020年07月30日、最後の「13億2,900万ドル」(利子除いた金額)を返済し、この時点でドル流動性スワップで調達したお金は全額返しています。これは『NY連邦準備銀行』のデータで確認できます(以下の記事を参照してください)。
『韓国銀行』も「ちゃんと返したと言っとかなきゃ」と思ったのかもしれません。
きみがいるだけで……
今回のリリースで興味深いのは、「ドル流動性スワップがあって良かった!」ときちんと効果についても述べている点です。以下になります。
改善されるなど、国内の外国為替部門が急速に安定した。
●発表直後、ドル資金調達に対する不安感が緩和され、株価が反発し、ドル為替レートが下落するなど、国内金融・為替市場がすぐに反応した。
(2020年03月20日、KOSPIは7.4%上昇、ドルウォン為替レートは、3.1%下落)
※この場合の下落はチャートでの下落。つまり、ウォン安方向へ上昇していたのを下に、ウォン高方向に向かわせた、という意味です
このように、とにかくスワップラインの締結を発表するだけで大きな効果があったのです。
韓国にとって「ドル流動性スワップ」は本当に「あって良かった!」「助かった」という恵みの雨でした。
ですので、韓国は「通貨スワップ」と連呼するわけです。
しかし、この臨時契約も2021年12月末までで終わりです。恐らく韓国側はさらなる延長、あるいはハードカレンシー国のように「常設」にしてくれと願うのではないでしょうか。
FRBがこれになんと応えるのか、年末ごろを楽しみにお待ちください。
※韓国メディアは「通貨スワップ」、時に「通貨スワップ協定」と呼称しますが、紛らわしいのでMoney1ではFRBに従って「スワップライン」「ドル流動性スワップ」と記載します。本稿のタイトルはアンカーが韓国の表記に合せて「通貨スワップ」としています。
(柏ケミカル@dcp)