2022年11月28日、韓国の企画財政部主導でまたぞろ「緊急マクロ経済金融会議」が開催されました。
焦眉の急は資金調達市場の流動性不足をなんとかすること、です。年末に向けて韓国企業の資金難を一段落させないといけません。
韓国の金融当局もそれは分かっていますので、さらに債券市場安定ファンドに資金を突っ込むことなどを決めました。以下が企画財政部が出したプレスリリースです。
注目ポイントを和訳します。まず以下です。
(前略)
ただ、短期資金市場を中心に困難が残っている。銀行圏への資金移動や業種別資金調達条件の格差などが資金の隘路として作用している。(中略)
ㅇ政府・関係機関・金融圏の緊密な共助を通じて
➊債券市場の需給安定
➋市場・企業の流動性の改善
➌不動産市場安定化
について、市場安定措置を迅速に推進する。
(後略)⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「緊急マクロ経済金融会の開催結果」
「銀行圏への資金移動」は、Money1でもご紹介した預金金利の上昇による預金の急増です。これもまた流動性を損なうものとして、第1銀行圏に「金利を抑制してあまり預金を集めないように」という要請を行っています。
同プレスリリースでは「債券市場の需給安定」に対して以下を行うとしています。
(9.5兆ウォン ⇒ 3.8兆ウォン)
➋『韓国電力』『韓国ガス公社』などの公共機関は銀行圏との協力などを通じて、債券発行物量の縮小、時期分散、銀行ローンへの切り替えなどを推進する
⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「緊急マクロ経済金融会の開催結果」
公共機関が巨額の債券を発行すると、そのあおりを食って民間企業が発行する債券に資金が回らなくなる恐れがあるので、韓国政府は国債の発行を縮小し、『韓国電力公社』や『韓国ガス公社』もまた債券の発行量を減少させるというのです。
涙ぐましい努力といえます。
さらに債券市場安定ファンドにさらに資金を投入することも実施します。キャピタルコールの実施で、以下のように説明しています。
⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「緊急マクロ経済金融会の開催結果」
3兆ウォン規模で推進した第1次のキャピタルコールに続き、第2次で5兆ウォン規模のキャピタルコールを行うとしています。
このファンドに資金を供給する金融機関には、『韓国銀行』が供給資金の50%以内(最大2兆5,000億ウォン)まで資金を支援します。資金援助は買戻条件負債権(RP)買取を通じて行われます。
ファンドにお金を出してくれたらお金を貸すよ――という妙ちきりんな話ではあるのですが、信用の拡大のためです。
お金を集めた債券市場安定ファンドは、債券などの買い取りを行って流動性を供給する肚です。
国策銀行である『産業銀行』などが社債、CP、証券会社・建設会社保証のPF-ABCP(Asset-Backed Commercial Paper:資産担保コマーシャルペーパー)を購入して流動性を供給するプログラムを動かします(一部はすでに稼働済み)。
3兆ウォンなどでは足らないと分かったようです。
ただ問題は、信用等級の低い企業の社債・CPなどを買ってくれないと脆弱な企業にお金が回らない点です。信用等級の高い企業だけが流動性を確保できるのであれば、事態はあまり変わらないかもしれません。
さらには、銀行の予備率規制の追加緩和を行います。金融委員会は10月に、銀行が維持すべき予備率を100%から105%に6カ月間一時的に緩和しましたが、小商工人市場振興基金など政府資金を財源とする11種類の融資については予備率算定時の貸出金から除外することにしました。
これによって金融委員会は「規制緩和で銀行には8兆5,000億ウォンほどを追加で貸し出せる余力が生じる」と見込んでいます。
なんだかもう「やれることは全部やる」という姿勢で、緊急会議でこのような施策を打ち出した韓国金融当局ですが、これで資金調達市場が安定を取り戻すかどうか――要注目です。
(吉田ハンチング@dcp)