製鉄業において高炉が停止するというのは、魂がなくなるのも同然です。
中国で今、鉄鋼業が危機的状況に陥っています。「閉鎖・倒産・合併」が待ったなしという企業が相次いているのです。
例えば、2023年05月31日、河北省唐山『德龙钢铁有限公司』(Delong Steel Co., Ltd.)は製鉄所の3基の高炉の停止を発表。3,000人近い従業員を抱え、年間240万トンの鋼材を生産する企業だったのですが「飛び」ました※。
※一応『九江线材有限责任公司』に生産能力を統合・再編するとしています。
この企業は従業員に対して給与未払いがありました。突然企業が破綻し、操業停止となったので、06月01日には、従業員の皆さんは「ふざけるな」と抗議活動を行っています。
中国はヘンな国で、もうかる!となると我先にとそれに飛びつき、需要も考えずに生産を行って需給バランスを崩壊させ、揚げ句に安値叩き合いで「みんなダウン」となります。
分かっていてもやるので、イナゴの大進軍みたいなものです。
鉄鋼業もまさにこれです。2023年はここまで鉄鋼価格は25%も下落しており、企業が耐えられなくなりつつあります。この価格下落は需給バランスの崩壊によって起こっています。
(よせばいいのに)中国共産党が各地で製鉄企業を造って、鉄鋼を乱造。海外にも輸出して日本企業なども大変に迷惑を被っているのですが、この乱造が成立するのは、国内の不動産業あってのこと。
中国の「不動産右肩上がり神話」に支えられてきたのですが、読者の皆さまもご存じのとおり、宇宙一の不動産ディベロッパーと号した『恒大集団』(本当です!)が事実上破綻するなど、不動産市場は沈滞しています。
当然、建築資材もだぶつき、需要が低迷するわけで、これが鉄鋼業界を直撃しているのです。
『Radio Free Asia』のリポートによれば、中国には『德龙钢铁有限公司』クラスの製鉄企業が500あって、そのうちの10%が同様の目に遭う可能性があるとのこと。『德龙钢铁有限公司』のエンジニアの話を取っているのですが、それによれば「10%なくなるのも普通のこと」だそうです。
ある鉄鋼業界関係者が投稿した動画では、「山西省、河北省、江蘇省、山東省の多数の鉄鋼企業が、産業構造の調整により資本連鎖が壊れ、救済のための資産売却を検討している。全国の多数の鉄鋼企業が、現在閉鎖、あるいは売却に直面している」となっています。
救済するにしても、そもそも供給過多なわけで、高炉を買っても仕方ないのです。事業損失を抱えており、資本を供給するためのチェーンが壊れているので「持続不可能」ということになります。
野放図に製鉄企業を乱造したツケなので事後自得ですが、こういうところでも中国は失業者を増加させているのです。地方政府には救済するためのプランもお金もありません。中央政府だって同じです。
(吉田ハンチング@dcp)