自由主義陣営国が「de-risking(デリスキング)」と呼ぶ「脱中国」を推進しており、経済・技術の発展が危なくなってきた中国は、対抗するプロパガンダを繰り広げています。
英語版御用新聞『Global Times』の紙面が最近とみにヒステリックになってきています。とうとう「アメリカ合衆国は台湾のハイテク産業を乗っ取ろうとしている。台湾経済の未来は圧迫される」(US hijacks Taiwan’s high-tech industries, squeezes island’s economic future)という記事まで出しています。
記事から一部を以下に引用してみます。
(前略)
合衆国からの圧力により、『TSMC』は他の台湾チップメーカーと同様、合衆国での工場設立に同意せざるを得なくなった。熟練労働者の不足と合衆国での製造コストの高さから、『TSMC』のアリゾナ新工場は量産を2025年に延期すると発表した。
台湾労働党のWang Wu-lang氏によると、500人以上の台湾人技術者とその家族が合衆国に移転したという。
技術者の移転に加え、『TSMC』のサービス供給キー、顧客、その他の中核事業データも合衆国商務省に引き渡される可能性が高いとWang氏は述べた。
台湾メディアによると、半導体産業は台湾全体のGDPの13%を占めており、台湾の経済発展にとって極めて重要である。
しかし、台湾の半導体産業の発展は、設備、原材料、資本の調達を含め、米国市場に大きく依存していると、中国社会科学院台湾研究所の准研究員であるWang Ziqi氏は述べた。
(中略)
合衆国は台湾を合衆国主導の経済・技術標準システムに引き込み、台湾の経済産業を完全にコントロールし、台湾を無条件で合衆国に依存させようとしている、とWang Jianmin氏は指摘する。
(中略)
合衆国は台湾を地政学的な駒として扱い、ワシントンはできる限りの価値を引き出した後、速やかに台湾を放棄するだろう、とLi Fei氏は言う。
⇒参照・引用元:『Global Times』「US hijacks Taiwan’s high-tech industries, squeezes island’s economic future」
『TSMC』が合衆国にファウンドリーを造ることになり、台湾のGDPの13%を占める半導体産業が空洞化したらどうなるんだ、という警告を発しています。こういうのをためにする議論といいます。
第一、ファウンドリーを合衆国に造らざるを得なくなった原因は中国共産党にあります。中国が台湾を武力侵攻してでも統一すると、習近平総書記が宣言しているせいです。
人民解放軍が攻め込んでくるかもしれない台湾に、重要な半導体ファウドリーを置いておくことなどできるわけがありません。
『Global Times』は、世界最強の半導体ファウンドリー企業である『TSMC』について執拗に言及していますが、そもそも『TSMC』はアメリカ人であるMorris Chang(モリス・チャン:張忠謀)さんが創業した会社です。
先にご紹介した『The New York Times』のインタビュー記事で、Changさん自身が強調しているとおり、1962年に合衆国の国籍を取得していらっしゃいます。『TSMC』は1987年創業ですから、明らかにアメリカ人が創業した会社なのです。
『TSMC』が合衆国に工場を造ることで、台湾の半導体産業が空洞化するぞ、などと警告しているのは完全なお門違いです。合衆国が「アメリカ人が作った会社」を保護しようとするのになんの問題があるでしょうか。
英語版の御用新聞である『Global Times』がヒステリックな記事を出すのは、中国への圧迫が功を奏していることの証明。このまま中国に圧力をかけ続けるのが上策です。
(吉田ハンチング@dcp)