最近なぜか韓国メディアでは『サムスン電子』の先行きを懸念する声が上がっています。アメリカ合衆国は、トランプ前政権以降半導体を中国に渡さない方針を取っていますし、サプライチェーンの組み替えで台湾を優遇しています。
このような背景に、世界最大のファウンドリーである台湾『TSMC』(Taiwan Semiconductor Manufacturing Companyの略:台湾積体電路製造)は、その影響力を拡大。
これが韓国メディアから見れば「おらが『サムスン電子』の脅威」と映るのでしょう。『TSMC』と『サムスン電子』を比較する記事が散見されます。
しかし、『TSMC』は半導体業界のモンスターです。技術を磨き、投資を行って世界最先端の微細化プロセスを進行させており、世界トップ企業から半導体製造の依頼がひきも切らず集まっています。これに勝つのは容易なことではありません。
『TSMC』と『サムスン電子』の諸元を比較すると以下のようになります。
まずファウンドリー(半導体の受託生産)事業の売上です。
※『サムスン電子』は非メモリー部門/2021年は予測/データ出典:『マネートゥデー』
『TSMC』が圧倒していますが、その差は拡大します。2018年に「218.7億ドル」(約2兆4,109億円)だった差は2021年には「375.7億ドル」(約4兆1,417億円)になると予測されているのです。
先にもご紹介したことがありますが『TSMC』は利益率でも『サムスン電子』を圧倒しています。
『TSMC』:41.6%
『サムスン電子』:17.9%
利益をたくさん出している会社の方がより多くの投資を行えるのはいうまでもありません。実際、『TSMC』は以下のような投資規模を明らかにしています。
2021年04月:今後3年間で1,000億ドル(約11兆240億円)を投資
この巨額投資は競争力の増進につながります。一方の『サムスン電子』は特にシステム半導体を強化するとして2030年までに「1,171.8億ドル」(133兆ウォン/約12兆9,179億円)の投資を表明しています。
『サムスン電子』:10年で1,171.8億ドル
ですから、年次で見れば明らかに『TSMC』の方が多くの資金を投じる予定です。
また韓国メディアが指摘するのは、テッパンと思われてきたメモリー分野での『サムスン電子』のシェア低下です。
DRAMではかつて48.0%あったシェアが2020年には43.1%まで落ちました。NAND型メモリーでは、2017年の40.4%をピークに2020年には33.4%まで下落しています。
本件を報じた韓国メディア『マネートゥデー』では以下のように書いています。
(前略)
専門家は、収益性の低下の根本的な原因を競争力の低下と指摘する。難攻不落とされていた『サムスン電子』のメモリー半導体技術・市場競争力が落ちているということだ。
(後略)
難攻不落とか無敵とか、はあまり言わない方がいいと思うのですが、メモリー半導体でシェアが低下し、システム半導体の分野でも成果が出ず――という事態が警戒されるわけです。
韓国メディアとしては『TSMC』がどんどん先にいくのは困ったことで、そのために『サムスン電子』に懸念を表する記事が出てくるのでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)