枯渇するも何も、すでに枯渇しているのですが。
積立金が枯渇する韓国の「雇用保険基金」
韓国の雇用保険基金は事実上破綻※しており、「制度を維持するためにどうすんだ」という解決策を至急見つけなければなりません。
以下は雇用保険基金から給付されている「失業給付」(日本でのいわゆる「失業保険」)の金額推移ですが、韓国政府の「雇用は回復している」という発表とは裏腹に、直近6カ月は1兆ウォン(約950億円)超えの高止まりを続けています。
雇用保険積立金のお金はどんどん減少していますので、いつまでもこのような給付を続けることはできません。
2021年末には、基金にあるお金は「4.7兆ウォン」(約4,465億円)まで減ると予想されています(2020年末には6.7兆ウォン(約6,365億円)ありました)。
論より証拠。以下の積立金の激減ぶりをご覧ください。
雇用保険基金「積立金」の推移
2017年:10兆2,544億ウォン(約9,741億円)
2018年: 9兆4,452億ウォン(約8,973億円)
2019年: 7兆3,532億ウォン(約6,985億円)
2020年: 6兆6,696億ウォン(約6,336億円)
2021年:4兆7,000億ウォン(約4,465億円)
※2021年は推定値
2020年から2021年にかけて約2兆ウォン減少していますので、このペースを2年続けると2023年には枯渇というわけです(計算上は7,000億ウォン残りますがこんな金額ではないも同然)。
このような状況に陥っているため、2021年09月01日、韓国の雇用労働部は重い腰を上げて「雇用保険財政健全化方策」を出しました。
やはり保険料率アップしかない!
以下は、雇用労働部が慌てて出した雇用保険改革案のリリースと主な内容です。
・基金で運用している事業の整理
・一般会計からの繰入金1.3兆ウォン
・保険料率を0.2%アップ
雇用保険基金で運用している事業を整理、一般会計からお金を引っ張ってきて、保険料率も上げる――というわけですが、庶民に響くのは保険料率の上昇です。
韓国の社会的セーフティーネットは先にご紹介したとおり、「低負担・低福祉」が通り相場でしたが、これが「高負担・低福祉」に転じる可能性が高いのです。
シミュレーションは確かなのか? 韓国の生産人口は急減するのに
雇用労働部は、この改革案で雇用保険基金の積立金は2025年には「8兆5,000億ウォン」(約8,075億円)まで回復する――としています。
本当にそうなるかどうか分かりません。
というのは、韓国は昨年から人口の自然減少フェーズに入っており、しかも少子高齢化は他の国が、いえ人類が経験したことのないペースで進んでいます。生産人口は急速に減少するのです。
雇用労働部のシミュレーションパラメーターの詳細が分かりませんが、甘い可能性は否定できません。また、韓国経済が想定どおりに回復するかも未知数です。
というわけですので、雇用保険基金の事実上の破綻状態が解消されるのかどうかにご注目ください。韓国経済は2020年に重大な旋回点を超えたのではないでしょうか。
※雇用保険基金は、他の基金からお金を融資してもらわないといけなくなっています。現在「7兆9,000億ウォン」(約7,505億円)を借りており、その利子も返済しています。
(吉田ハンチング@dcp)