韓国は日本と同じく「国民皆保険制度」のある国です。国民健康保険に加入すると、定められた額の「保険料」を支払う必要がありますが、韓国では月どのくらいの金額を支払う必要があるのでしょうか? 韓国の「国民健康保険」についてご紹介します。
韓国の国民皆保険制度ができたのは最近のこと!
韓国では1963年に医療保険法が制定され、1977年に医療保険制度がスタートしました。以降は法改正を行いながら加入対象となる範囲を拡大し、1989年に「国民皆保険」を達成しました。
その後、2000年に「国民医療保険法」が成立し医療保険組合が一つに統合されました。
日本の場合、会社員が加入する被用者保険は企業や全国健康保険協会組合などが保険者、学生や自営業者が加入する国民健康保険は地方自治体が保険者と分かれていますが、韓国は全ての医療保険を国民健康保険公団がカバーしています。
これは日本との大きな違いです。
月に支払う国民健康保険料は? ほとんど1万円未満で済む!
国民皆保険なので、韓国国内に住んでいる人は全て加入が義務付けられています。
2019年には国民健康保険制度の改正が行われ、国内に6カ月以上継続して滞在する外国人も加入が必須になりました。
韓国の国民健康保険は、企業に雇用されている人やその家族が対象の「職場加入」と、自営業者など雇用されていない人が対象の「地域加入」に分けられています。
「職場加入」と「地域加入」の月額健康保険料の算定方法は以下のとおりです。
●職場加入
報酬月額 × 6.67%(算定された保険料を企業と被保険者で折半)
※保険料率は2020年のもの
年間の総報酬額を12で割って報酬月額を計算し、そこに6.67%を掛けます。本人50%、企業50%(公務員の場合は国)で折半になるので、算出された金額を2で割って出た数字が保険料です。
韓国経済研究院による2019年のサラリーマン平均年収は「3,634万ウォン」(約310万円:2020年5月15日のレート「1ウォン=0.087円」で換算)なので、
(3,6340,000/12) × 0.0667 ÷ 2 = 100,994.917
職場加入の場合の1カ月当たりの国民保険料はだいたい10万1,000ウォン(約8,800円:レートは同上)ということになります。
さらに韓国では国民健康保険料だけでなく、「長期療養保険料」も同時に納めないといけません。長期療養保険料は「健康保険料×長期療養保険料率10.25%」で計算されます。
長期療養保険料 = 10万1,000ウォン × 10.25% = 1万352ウォン
つまり、年収3,634万ウォンの人は、「10万1,000ウォン + 1万352ウォン」で月に計11万1,352ウォン(約9,687円:レートは同上)を支払う必要があるのです。
●地域加入
保険料賦課点数 × 195.8ウォン
地域加入の場合は、保険料賦課点数に、195.8ウォン(約17円:レートは同上)を掛けた金額が収めないといけない保険料です。
保険料賦課点数は、国民健康保険公団が所得や資産、自家用車の有無などを基に算出するポイント。
例えばスコアが1,000であれば、これに195.8を掛けた19万5,800ウォン(約1万7,000円:レートは同上)が月額保険料となります。加えて、職場加入と同様に月額保険料に10.25%を掛けて算出される長期療養保険料率を同時に納めないといけません。
韓国メディア『Doctor’s News』2019年08月23日の記事によれば、「職場加入」「地域加入」の平均納付金額は以下のようになっています※1。
職場加入:11万2,365ウォン(約9,776円)
地域加入:8万7,067ウォン(約7,575円)
⇒参照・引用元:『Doctor’s News』「来年の健康保険料率3.2%上がる…2年連続3%台引き上げ」
※12020年に「6.67%」へ料率が上がったため、「職場加入」の平均保険料が「11万6,018ウォン」、「地域加入」の平均保険料が「8万9,867ウォン」になると同記事では予測しています。
保険料を日本と比較してみよう!
日本の被用者保険の場合、保険料率は地域によって異なりますが、例えば東京都なら保険料は9.87%(令和2年4月分【5月納付分】以降、介護保険料率を除く)です。韓国のサラリーマン平均年収と同じ310万円で計算してみましょう。
310万円を年間総報酬額(基本給と諸手当を合算した金額)と考え、12カ月で割って月額報酬を出してみます。この場合、報酬月額は25万8,333円になります。
この金額を東京都の保険料額表に照らし合わせると、月の健康保険料は2万5,662円。会社と折半なので、実際に引かれる金額は1万2,831円です。韓国の場合、介護保険料を除いた健康保険料は月に10万1,000ウォン(約8,800円)なので、韓国の方が国民健康保険の負担は少なくて済むようです。
ただ、韓国は入院費は2割負担と優遇されていますが、一般的な病院の場合は診察料の自己負担割合は35~40%(地域によって異なる)。大きな総合病院は45~50%、最もグレードの高い上級総合病院で診察を受けた場合は診察費は全額負担です。
月々の負担額が少なく、いざというときの負担が大きいのが韓国の国民健康保険の特徴といえるでしょう。
つまり韓国は健康保険についても「低負担・低福祉」の国なのです。
⇒参照・データ引用元:『国民健康保険公団』「国民健康保険制度の概要 保険料」
https://www.nhis.or.kr/menu/retriveMenuSet.xx?menuId=B2230
⇒参照元:『レコードチャイナ』「韓国のサラリーマンの平均年収はいくら?」
⇒参照・データ引用元:『全国健康保険協会』「令和2年度保険料額表(令和2年4月分から)」
(中田ボンベ@dcp)