ご安心ください。現在の出来事ではありません。しかし、韓国の国会ではかつて表題のような無茶苦茶なことがあったのです。李承晩大統領の時代です。
若い世代はご存じないと思いますのでご紹介します。
李承晩さんは韓国の初代大統領。
韓国では大統領を「第○代」と数えます。大統領選挙があって選ばれるたびに「代」の数が増えます。
初代:1948年07月20日~1952年08月04日
第2代:1952年08月05日~1956年05月14日
第3代:1956年05月15日~1960年03月14日
李承晩さんは3回選挙で選ばれ、1948年から1960年まで大統領を務めました。そのため、初代大統領ですが、第2代大統領、第3代大統領でもあります。
2022年05月10日に就任した尹錫悦大統領は第20代統領ですが、20人目というわけではないのです。
また、韓国の場合には、憲法の改正や大統領の交代によって第○共和国と数えます。李承晩大統領の時代は「第一共和国」です。
四捨五入で憲法改正を可決させた!
李承晩大統領はなぜ3回も大統領になることができたのでしょうか。
それは「大統領の三選を禁止した憲法」を改正したからです。
1954年05月に行われた第3回総選挙で、当時の政権与党が圧勝しました。李承晩大統領が作った『自由党』です。
「これでいけるだろう」と、李承晩政権は、1954年09月、国会に「大統領の三選禁止撤廃」を盛り込んだ憲法改正案を提出。
自身の三選を可能にするだけでなく、信頼のおける人物を副大統領にすれば、大統領を退任した後も身の安全は保障されるというわけです。
図々しい憲法改正を企んだものですが、1954年11月27日、国会で評決が行われました。
憲法改正には国会定数(当時の定数は:203議席)の2/3以上の賛成が必要でした。203の2/3は「135.333……」ですから、可決には136人の賛成がいるわけです。
ところが、
賛成:135
と1票足りませんでした。否決されたのです。
目論見が狂った『自由党』は、翌28日に緊急議員総会を開催して「135.333……は四捨五入すれば135人なので2/3以上を獲得したと見なすべき」と声明を出します。
李承晩政府もこれに賛成。
1954年11月29日、国会で崔淳周国会副議長が憲法改正案の可決を宣言。抗議した野党は議事堂から退出しますが、政府与党『自由党』はこれ幸いと改正案を再可決。
これによって、李承晩大統領の三選が可能になりました。
これが韓国の憲政史に燦然と輝く「四捨五入改憲」です。
(柏ケミカル@dcp)