アメリカ合衆国が半導体をテコに中国に圧迫を加えています。
中国に「最先端の半導体を作らせない・渡さない」がその主旨ですが、
半導体のサプライチェーンを自由主義陣営で固めるために「Chip4(チップ4)」という半導体同盟を結成することを目指しています。アメリカ合衆国・日本・韓国・台湾の連合です。
合衆国と中国のどちらを選択するのか、という決断ですから日本・台湾はもちろん合衆国です。中国を選択するなんてことはあり得ません。
しかし、韓国の場合は悩んでいます。中国からひどい目に遭わされるかもしれないからです。
韓国政府は中国の顔色を窺い「どうしたものか」と思案中です。現在の尹錫悦(ユン・ソギョル)政権は親米に舵を切ったのですが、それを貫く「覚悟」がないのです。
韓国は中国への忖度で「Chip4」について米国に注文
韓国メディア『毎日経済』が「Chip4」に関する独占記事を出しています。この中に非常に興味深い部分があります。
以下に一部を引用します。
07日、大統領室・企画財政部・産業通商資源部などによると、このような合衆国の要請に対して、韓国は来月初めの予備会合を行う方案を検討している。
韓国は半導体協力の必要性を合衆国と議論するが、中国を刺激しない協議原則を議題に盛り込むという内部方針を立てたことが確認された。
(中略)
政府は予備会合で大原則2つと詳細なテーマ4つを基に、今後の半導体協力方向を議論しようと合衆国に提案した。
⇒参照・引用元:『毎日経済』「【独占】米国、韓国に『チップ4予備会』提案」
2022年09月には合衆国と「Chip4」について議論するものの、「中国に配慮したものにしてほしい」と合衆国に提案したというのです。
いかに韓国政府が中国を恐れているかが分かります。
それは「技術をよこせ」という話なのか
注目は、大原則2つと詳細なテーマ4つの内容です。『毎日経済』の同記事によれば以下のようになっています。
大原則
●「Chip4」参加国は中国が強調する「一つの中国原則(One China policy)」を尊重しなければならない●中国に対する輸出規制には言及しない
中国が主張する「一つの中国原則」を尊重し、中国への輸出規制には言及しない、が大原則だそうです。次に、4つのテーマなるものです。
①参加各国で半導体支援法を施行したことによる産業支援優秀事例の共有
②半導体人材の交流を拡大する
③先端半導体部門に対する技術協力
④供給網協力の強化
注目は③です。「先端半導体部門に対する技術協力」となっていますが、これは「最先端の技術をよこせ」という意味ではないでしょうか。
なぜそんなことがいえるかというと、韓国は半導体強国などと誇っていますが、それはメモリー半導体に限った話だからです。
システム半導体、半導体設計については合衆国に圧倒的に及びませんし、素材や製造装置などについては日本が優位にあります。
また、微細工程の半導体生産については台湾の『TSMC』に水をあけられつつあります。10ナノメートル以下の半導体製造能力の9割は台湾が押さえているといわれるのです。
このメンバーから技術移転を狙っていたとしても全く不思議ではありません。
2022年08月08日、韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は「Chip4」に参加するのかと聞かれて、
「今、政府各省庁がその問題を徹底的に韓国国益の観点から丁寧に調べている」
この「韓国の国益」の中には「技術移転」が入っているのかもしれません。もしそうなら相当にムシのいい話です。
韓国が目先の「中国に怒られないこと」だけ考えて、「Chip4」加盟に背を向けた場合、合衆国の目論むサプライチェーン再編から蹴り出される可能性もあります。
出た!「韓国はバランサー」
同じ『毎日経済』に「Chip4」を巡って、どこかで見たような「論」も出ています。以下に記事から一部を引用してみます。
政府は米・日・台湾・韓の半導体サプライチェーン協議体(チップ4)構成と関連した合衆国の予備会合提案に対して、09月初めに会合を行おうと合衆国に逆提案した。
これについて関係省庁では、米中の葛藤が大きくなる中、韓国が「仲裁者」の役割をするという戦略だという解釈が出ている。
中国を刺激せずに4カ国が協力して産業シナジー効果を得るシナリオを模索しようということだ。
(後略)
「米中の間で韓国が仲裁者の役割を果たす」という寝言が出ました。「中国を刺激せずに4カ国が協力して産業シナジー効果を得るシナリオ」を模索するそうです。
恐らく、合衆国は「ダメだこりゃ」という感想を持つでしょう。韓国は放置して「Chip3」にして進めたらいかがでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)