2022年09月07日、『韓国銀行』から2022年07月の国際収支統計(暫定版)が公表されました。
韓国メディア『中央日報(日本語版)』には「経常収支3カ月連続黒字…商品収支は10年ぶり赤字に転落」というタイトルの記事が出ています。「3カ月連続黒字」と書いていますが、喜んでいる場合ではありません。
以下が今回公表されたデータの経常収支の部分です。
2022年07月(暫定版)
貿易収支:-11億7,990万ドル
サービス収支:3億3,700万ドル
第1次所得収支:22億6,700万ドル
第2次所得収支:-3億3,540万ドル
経常収支(上記4つの合計):10億8,870万ドル⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「ECOS」
当月の注目はなんといっても貿易収支が赤字に転落したことです。
これは通関ベースの貿易収支の赤字ではありません。国際収支統計の赤転ですので、経常収支に直結する深刻な事態です。
国際収支統計上での貿易収支の赤字転落は、2012年04月に記録した「-3億2,830万ドル」以来のことです。
何度もご紹介していますが、韓国は(国際収支統計の)貿易収支が赤字になると、経常収支が赤字に転落する可能性が高まります。つまり、国が傾きます。アメリカ合衆国であれば別ですが、韓国の場合はモロに危ない状況になるのです。
実際、2012年04月の経常収支は「-1億4,480万ドル」と赤字でした。
実際、貿易収支が赤転したため、上掲のとおり07月の経常収支はわずか「10億8,870万ドル」しかありません。薄氷を踏む、かろうじての黒字です。
ここまでの経常収支の推移を見てみましょう。以下をご覧ください。
2021年と2022年の月次の経常収支の推移です。
オレンジの2022年の経常収支が2021年の青い線よりも常に下にあります。しかも当月は赤字になるスレスレまで下がり、対前年同月比で「66.2億ドル」も減少しています。
01~07月の累計で比較すると以下のようになります。
2021年:494.6億ドル
2022年:258.7億ドル
昨年と比較して、2022年は経常収支は「47.7%」減少しました。
「3カ月連続黒字」などと自分を慰めている場合ではありません。事態は深刻といわざるを得ません。
08月は通関ベースで貿易収支が「-94億7,400万ドル」で締まっているのです(ただし暫定版)。これが国際収支統計で大きな赤字となった場合、経常収支が赤転する可能性があります。
いつもそうですが、経常収支の赤字化は韓国経済にとって危険サインです。
08月に経常収支が赤転するかどうかにご注目ください。10月初旬にデータが公表されます。
いよいよ正念場ではないでしょうか。
2022年07月の通関ベースの貿易収支は「-48億500万ドル」で赤字でしたが、これまでの例からいって国際収支統計では黒字転換するものと読んでいましたが外しました。
08月(国際収支統計の)貿易収支は赤字転落するものと予測していますが、1カ月早かったです。
この07月の国際収支統計では1点意外なことが起こっています。国際収支統計の貿易収支の「輸出」が、通関ベースのデータより2.5%も下にブレたのです。これは異常値です。
通関ベースの「輸出金額」が国際収支統計で締まると、普通上にブレます。2021年01月~2022年06月では平均「+1.0%」です。ところが、07月は「-2.5%」です。輸出金額が小さくなったため、「輸出 – 輸入」で求める貿易収支は赤字方向に傾きました。
疑い深い筆者などは、07月に減らした分を「経常収支が赤字に転落しそうな08月」の輸出に足しこもうとしているのではあるまいな――と邪推してしまうのですが、恐らく気のせいでしょう。
いずれにせよ、1カ月後に公表される08月の国際収支統計にご注目ください。
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(吉田ハンチング@dcp)