韓国では不動産バブルの崩壊、およびそれを引き金とする経済の不安定化について懸念されています。
弾けないバブルはありませんが、韓国としてはハードクラッシュは避けて軟着陸としたいところです。もちろん、そんなことができるかどうかはともかくとして、ですが。
2023年01月11日、韓国の金融委員会が不動産ローンについての新たな特例措置について公表しました。
前文政権の末期から、家計負債、および不動産市場の急騰への対策として韓国政府は住宅への資金投入をしにくくしてきました。それがDSR規制・LTV規制・DTI規制です※。
※DSRはDebt Service Ratioの略。可処分所得に占める負債の元利償還額の割合を求めます。負債元利金償還比率。LTVはLoan To Valueの略。貸出残高/担保評価額で求めます。DTIはDebt To Incomeの略。住宅ローン債務者の年間返済額の年収に対する比率です。
しかし、これによって不動産購入に歯止めがかかり、また金利急騰によって不動産ローンが申し込みにくくなっており、これが需要減につながっています。需要減少がこのまま続くと不動産価格が下落する一方です。
その先には不動産市場の急下落とハードクラッシュがあるかもしれません。
そこで、韓国の金融委員会は今回、これまでの措置を合併する形で、2023年01月30日から以下のような特例枠の住宅ローンを設けました。
住宅価格:9億ウォン
ローン上限:5億ウォン
所得限度:なし
金利:
優遇型:4.65~4.95%
一般型:4.75~5.05%
+優遇金利適用
満期:10・15・20・30・40・50年
先にご紹介したとおり、住宅ローン金利が8%にまで達していますので、それから比較すれば5%程度で済むので安いといえます。
また、金融委員会はLTV規制、DTI規制の範囲内で9億ウォン以下の住宅に対して、最大5億ウォンまでの融資が受けられるとしました。
LTVは最大70%(生涯初住宅購入者なら80%)が適用されますが、マンションでないもの(二世代住宅・単独住宅んなど)は5%ポイント、規制地域は10%追加で上限が差し引かれます。
ただし、住宅価格が8億ウォン・所得9,000万ウォン・無住宅者である実需要者要件に該当するなら差し引かれません。
DTIは最大60%が適用され、規制地域であれば10%差し引かれますが、負債元利償還率(DSR)による規制は適用されません。つまり、所得による制限は受けないことになります。
また、ありがたいのは、既存住宅担保ローンをこの特例ローンに乗り換える場合だけでなく、今後特例ローンを中途償還する場合にも免除される(予定)という点です。
ややこしい条件はともかく、韓国政府は不動産市場の価格下落がこのままではマズイと判断しての措置です。利用しやすいローンを用意して需要を喚起し、下落するにしても墜落は避けたいという思惑だと推測されます。
この特例枠のローンで金融委員会は39.6兆ウォンを投入するつもりです。
約40兆ウォンの供給ですが、これで需要が再び高まって住宅市場が盛り上がるかはやってみなければ分かりませんが、金融委員会は「多くの人が利用できるもの」と自信を見せています。
不動産市場のハードクラッシュを避けるために致し方ないとはいえますが、これで民間の金融機関の住宅ローン業務を圧迫しないのか、という懸念は残ります。
(吉田ハンチング@dcp)