『Project Syndicata』サイトに興味深い記事が出ています。
「The Chinese Century Is Already Over」(中国の世紀はもう終わった)というタイトルで、中国が目論んでいたとおりにはならない――という内容です。
なぜ「もう終わった」といえるかというと、人口がすでに減少に転じたからです。同記事から一部を以下に引用します。
(前略)
例えば、中国政府のエコノミストは、2049年までに中国の1人当たりGDPはアメリカ合衆国の半分か4分の3に達し、GDP全体はライバルの2倍か3倍に成長すると予測している。しかし、これらの予測は、2049年に中国の人口がアメリカ合衆国の4倍になることを前提にしている。
仮に中国が幸運にも出生率を女性1人当たり1.1人で安定させることができたとしても、2049年の人口は合衆国の2.9倍にしかならず、人口動態と経済活力のすべての主要指標ははるかに悪化することになる。
このような誤った予測は、中国だけに影響を及ぼすものではない。地政学的なバタフライ・エフェクトが起こり、最終的には既存の世界秩序が破壊される可能性があるのだ。
中国当局は、東洋の台頭と西洋の衰退という長年の信念に基づき行動してきた。
(中略)
人口の高齢化は、中国経済にとって永久に大きな足かせとなる。
(中略)
では、中国を考えてみよう。1980年当時、中国の年齢中央値は21歳とアメリカより8歳若く、1979年から2011年までのGDP成長率は年平均10%であった。
しかし、2012年から初老の労働力人口(15~59歳)が減少し始め、2015年にはGDP成長率が7%に減速、2022年にはさらに3%に減速した。
1962年から1990年までの年平均2,340万人の出生数は、中国を「世界の工場」にした。
しかし、中国自身が誇張した公式数値でも、昨年の出生数は956万人に過ぎない。
その結果、中国の製造業は減少し続け、合衆国やその他の地域で新たなインフレ圧力を生み出すことになる。
(中略)
2030年には、中国の年齢中央値はすでに合衆国を5.5歳上回り、2033年には老齢従属比率が合衆国を上回り始める。
GDP成長率は2031年から35年にかけて合衆国を下回り始め、その時点で1人当たりGDPは、ライバルの30%にも届かず、ましてや中国の公的エコノミストが予測する50~75%にも届かない。
合衆国が世界最大の経済大国だとしても、中国ではなくインドが追い抜くことになるだろう。
確かに、中国は高齢化による経済的な足かせを補うため、人工知能やロボット工学に多額の投資を行っている。
しかし、このような取り組みができるのは限られた範囲であり、イノベーションの継続には若い力が必要だ。
さらに、ロボット労働者は消費しない。
消費はあらゆる経済の主要な原動力であるにもかかわらず。
中国の衰退は緩やかなものだろう。
中国の衰退は緩やかで、今後数十年間は世界第2位または第3位の経済大国として存続するだろう。
しかし、人口動態や経済力の衰えと政治的野心の拡大との間にある大きなギャップが、中国の戦略的判断を誤らせる可能性を高めている。
過去の栄光の記憶や失った地位への恐怖が、ウクライナでロシアが歩んだのと同じ危険な道を歩ませるかもしれない。
(後略)⇒参照・引用元:『Project Syndicata』「The Chinese Century Is Already Over」
そもそも中国当局が描いている絵図というのは、「2049年に中国の人口がアメリカ合衆国の4倍になる」ことが前提。
そうなれば「2049年までに中国の1人当たりGDPはアメリカ合衆国の半分か4分の3に達し、GDP全体はライバルの2倍か3倍に成長する」のです。
しかしながら、それはもう人口が減少に転じた今、実現は不可能――と断じています。
いっていることは「中国の夏は終わった」に他なりません。
この記事が懸念しているのは、中国が経済的衰退にもかかわらず、かつての栄光や政治的野心にとらわれてロシアのプーチン大統領のように侵略に乗り出しはしないか?です。
しかし、「かつての中華帝国の栄光を取り戻す」のが中国共産党の野望ですから、これはもう現在すでに行っているといえます。
自国が左前になる前に……という意味では、台湾はすでに危ないといえます。いつ侵攻されてもおかしくはありません。
(吉田ハンチング@dcp)