中国は自国の影響力を増し、経済圏を拡大するために「一帯一路」という構想を提唱しています。2019年03月23日には、財政難のイタリアがG7メンバーとして初めて同構想に支持を表明するという珍事(協力への覚書に署名)も起こっていますが、日本はじめ他のG7各国は一帯一路とは一応の距離を置いています。
また、ニューシルクロードなどと呼んでロマンをかき立てるものではあったのですが、ここに来て中国の狡猾なやり口が明らかなり、各国から批判の声が挙がっています。
中国の仕掛ける「債務の罠(わな)」
この一帯一路は、中国が各国へインフラ整備の資金を提供するという建付なのですが、この債務を返済できない事態になると、その国の重要な不動産や施設を中国企業が「99年租借」などの形で取り上げるといった、無法な契約が結ばされることが判明しているのです。
最も広く知られている例がスリランカです。スリランカは、自国の「ハンバントタ港」の整備を中国の資金で行ったのですが、債務を返済できない事態に陥りました。そのため、スリランカは99年間の同港の運営権を約11億ドルで中国企業に貸与せざるを得なくなったのです。
これは「金を返せないなら布団をはいでいく」といった高利貸しの所行です。
例えばバヌアツ、モルディブ、トルクメニスタン、エチオピアなどの国々が中国からの資金提供による巨額の債務に苦しんでおり、いつ中国の無法な所行が行われてもおかしくない状況です。
Money1ではかつてご紹介したことがありますが、ケニアで中国とケニア政府との間で結ばれた契約がいかにひどいものか、ケニアの主権を侵害したものであるのかがすっぱ抜かれたことがあります。
⇒参照:『Money1』「中国の仕掛けるあこぎな債務契約 ケニアで内容が暴露される!」
https://money1.jp/?p=6219
この中国の卑劣極まりないやり口は、その国を借金漬けにして債務契約で縛ってしまうため、「債務の罠」あるいは「借金の罠」と呼ばれているのです。
「インド太平洋ファンド」は機能するか?
中国の債務の罠にハマると、自国の港なのに使えないといった主権を喪失する事態になりかねません。中国の債務の罠からその国を救うための一助として提唱されたのが、いわゆる「インド太平洋ファンド」です。
これは2018年07月にアメリカ合衆国が設立を表明したもので、インド太平洋地域のインフラ整備のために投資を行うファンドです。07月30日、ポンペオ国務長官は「我々は決してこの地域の支配を目指さないし、他国がそうすることにも反対する」と述べており、このファンドが一帯一路の阻止を目指しているものであることは明白です。
07月31日、日本、オーストラリア※はこのファンド設立に合意し、協力することを表明しました。ただ、アメリカが表明した当初のファンドの資金規模は1億1,300万ドル。中国の投資規模に対抗するにはケタが3つ足りません。このファンド構想が進展し、機能するようになるにはさらなる資金拠出と有能な仕切りが必須なのです。
※
オーストラリアでは、2015年10月ダーウィン港の港湾管理権が中国企業「嵐橋集団」に99年貸与されるという事案が発生しています。対価は5億6,000万豪ドルとのこと。
(柏ケミカル@dcp)