ちょっとした悲喜劇です。
韓国は日本と同様に地下資源が乏しい国です。李明博(イ・ミョンバク)大統領の時代に(誰に吹き込まれたのか知りませんが)海外の鉱山を獲得しろ!と発破をかけて、資源開発に乗り出しました。
そんなホイホイ「有望な鉱山」は見つからない
「山師」なんて言葉があるとおり、鉱山開発というのは現在でも大変に難しいのです。『JOGMEC』さんに取材したことがありますが、「地表近くの鉱床はもう発見し尽くされている」そうです。
深いところを探すしかないのですが※、現在のように科学技術が進化していても、本当に有望な鉱山かどうかは「実際に掘ってみにゃ分からん」のだそうです。
※『JOGMEC』さんによると深度1,000mにも達するような場所を探すそうです。
また、鉱山の開発・運営というのは10年、20年かかって行うことですので、「早く早く」な韓国にはもっとも向いていないといえます。
Money1でもご紹介したことがありますが、李明博(イ・ミョンバク)大統領時代の海外資源開発は「当たり」がなく、赤字が累積するばかりで、仕方なく権利を取れた鉱山も泣く泣く売却する――という事態になりました。
ばっさりやったのは文在寅大統領の時代ですが、「日本に渡すのは我慢ならん」などという声が上がったほどです。
環境運動で鉱山閉鎖の憂き目に!
今回面白い事態になったのはパナマの銅鉱山です。
『韓国鉱害鉱業公団』は、2009年に『Minera Panamá S.A(ミネラ・パナマS.A)』※の株式の10%を取得しました。
『ミネラ・パナマS.A』は、世界屈指の新しい銅鉱山「Cobre Panama」(上掲写真)を運営しています。
銅の埋蔵量は約30億トンと見積もられているのです。鉱山の商業営業開始で、『韓国鉱害鉱業公団』は2021年には495億ウォン、2022年には1,452億ウォンという利益を計上しています。
ところが!
2023年12月、パナマの最高裁判所が「『ミネラ・パナマS.A』に少なくとも20年間の採掘を許可した採掘事業契約は憲法違反」と判断を下しました。鉱山の閉鎖が決定したのです。
なぜ、違憲とされたのかというと、「住民に対する環境汚染の影響が懸念され、人権への配慮から」とのこと。この最高裁判所の判断には、環境運動家の影響が多分にあります。
判決が出る前には、活動家によって鉱山の発電所と高速道路の一部が数週間にわたって封鎖されたりしています。
傍から見ていれば「あーあ」で済みますが、収まらないのは『韓国鉱害鉱業公団』です。同公団は、パナマ政府に対して7億4,710万ドル(約1兆ウォン)の賠償を求めるISDS提訴(投資家対国家の紛争解決)を決めました。
これに先立ち、2023年11月、『ミネラ・パナマS.A』の親会社である『First Quantum Minerals』は、国際商業会議所『ICC』(International Chamber of Commerceの略:国際商業会議所)へ「パナマに対する申し立て」を行っています。
韓国が絡むとなにがしかのオチがつくのが面白いところです。この賠償請求はどうなるでしょうか。
そういえば――三権分立だから、司法が出した判断については政府は責任はとらなくてもいい――と主張していたのは韓国ではなかったでしょうか。
※カナダの世界的鉱業および金属会社『First Quantum Minerals』傘下です。『ミネラ・パナマS.A』の株式の90%を保有。
(吉田ハンチング@dcp)