先に韓国が各国と締結している通貨スワップ協定の融通金額がおかしい(報道されている金額がおかしい)という記事を上げました。この機会に、ずっと「ヘンだなぁ」と疑問だった件を取り上げておきます。
他でもないUAE(アラブ首長国連邦)と韓国との通貨スワップ協定についてです。
通貨スワップ協定に狂奔するのはいつものことですが……
韓国と韓国メディアが通貨スワップ協定について大騒ぎするのは年中行事のようなものです。これは通貨危機のときにお金が足りずに大変な目に遭ったせいで、お金の工面のつらさが身に染みて分かっているからです。
それはいいのですが、2017年の秋頃、韓国と韓国メディアがまたぞろ通貨スワップ協定について狂奔していました。
というのは、2017年10月10日に中国との通貨スワップ協定が満期を迎えたのです。なんとかこれを延長したいという韓国政府の意向もあり、韓国メディアも「延長!」「延長!」と大騒ぎで報道していました。
この当時、韓国メディアは韓国が通貨スワップ協定を締結している国として5カ国を挙げていました。
・オーストラリア
・マレーシア
・インドネシア
・UAE
・中国
です。このうち中国が満期でうんぬんという話だったのです。
UAEとの通貨スワップ協定は「あるも同然」というウソだった
しかし、実はこのうちUAEとの通貨スワップ協定は2016年10月に終了しており、その後再締結されたという報道は聞かれませんでした。なのに「5カ国と結んでいる」と強弁していたのです。
韓国の経済紙『マネートゥデイ』では以下のように説明していました(残念ながら元記事へのリンクが見つかりませんので、当時のMoney1の記事に引いたものをそのまま用います)。
「昨年10月に失効した54億ドル規模の韓国とUAEの通貨スワップ契約も、両国が満期延長に合意したと発表した後、1年目の細部内容を調整中だ。そのため、両国の通貨スワップ契約は依然として有効なものと認識される」
※強調文字は筆者
当時のMoney1ではこれを「無茶苦茶な言説」と評しました。なぜなら「締結したものが満期終了」したのは事実で、まだ再締結に至っていなかったら、それは「なくなったもの」と認識しなければなりません。
「有効なものと認識される」じゃありません。なぜ「ないもの」が有効になるのでしょうか?
結局、その後どうなったのかは全く聞こえてこなくなりました。
ところが、2019年04月になってUAEと韓国が通貨スワップ協定を締結したという報道が出たのです(締結は04月13日)。例えば『中央日報(日本語版)』は以下のように説明しています。
「両国の最初の通貨スワップ契約は2013年10月に締結され2016年10月に満了した。再契約議論は両国の溝で遅れていた。今回の再契約期間は2022年4月12日までだ」
⇒参照・引用元:『中央日報(日本語版)』「韓国、UAEと54億ドル規模の通貨スワップ再契約」
https://s.japanese.joins.com/JArticle/252352?sectcode=300&servcode=300
じゃあ、やっぱりUAEとの通貨スワップ協定は2016年10月で終了していたんじゃん!なのです。
2017年10月には終了してから1年たっているのに、いやそれどころか再締結できた2019年04月まで「あるふり」をしていたわけです。ウソだったのです。
ひどい話ではないでしょうか。
「54億ドル」なんて言ってない
さらに、対UAEの通貨スワップ協定について韓国メディアはミスリードを行っています。各メディアに(融通金額の上限は)「54億ドル」と書かれていますが、これは2016年に満期終了したかつての通貨スワップ協定が「その規模(価値)だった」というだけです。
UAE中央銀行のプレスリリースには以下のように書いてあります。
United Arab Emirates, AbuDhabi, April13, 2019:Today,CBUAE and BOK renewed their Bilateral Currency Swap Agreement (BCSA) which was originally signed in October 2013at a value of $5.4billion,reaffirming their commitment towards promoting trade and financial cooperation between the two countries.
アラブ首長国連邦 アブダビ 2019年4月13日
本日、UAE中央銀行と韓国銀行は、2013年10月に54億ドルの価値で署名された二国間通貨スワップ協定(BCSA)を更新し、両国間の貿易と金融協力の促進に対するコミットメントを再確認した。The agreement, which contributed significantly to the development of economic and financial markets on both sides, will continue to allow exchange of local currencies between the two central banks of up to AED 20 billion equivalent to KRW 6.1 trillion.
この協定は、両国の中央銀行間で6.1兆ウォン相当、200億AED(UAEの通貨「UAEディルハム」の略称です:筆者注)までの現地通貨の交換を約束するものです。
The effective period of the facility will be over a period of three years commencing today (April 13, 2019) and be extended following mutual consent of both parties.
この便宜の有効期限は、本日(2019年4月13日)から3年で、これを超える場合には両当事者の相互の同意に基づいて延長される。
⇒参照・引用元:『UAE CENTARL BANK(UAE中央銀行)』「Central Bank of the UAE and Bank of Korea Renew AED 20 Billion Bilateral Currency Swap Agreement」
https://www.centralbank.ae/sites/default/files/2019-04/PRESS-RELEASE%20%28UAE-KOR%29%20-%20FINAL%20-KOREA%20-English.pdf
となっています。つまり「54億ドル」が保証されるのではなく、韓国の「6.1兆ウォン」に相当する「200億AED」を上限としてスワップするよ、という話であって、それが何ドルになるのかは「時価」です。ですから「これで54億ドル確保」とするのは間違っています。
先の記事でご紹介したように、「2020年02月03日 12:21UTC」の対ドルレートで計算すると、200億AEDは約54.45億ドルで、(韓国にとってはうれしいことに)増えていますが、これはもちろんレートによって変化します。他の国と締結している通貨スワップ協定でも同じですから、総額何億ドルという報道には本当に時価で計算しているのか確認しないといけません。
追記
なぜ現在の通貨スワップ協定の(最大上限)融通金額では足りないと考えられるのかについて、以下の記事をまとめました。実は2017年に韓国の識者が自分たちで「足りない」と告白してもいるのですが。
併せてお読みいただければ幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
(柏ケミカル@dcp)