中国『山東泰山鋼鉄』で「金返せ」騒動。不渡り「11.7億元(245億円)」。手形未決済「27.7億元(581億円)」

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2025年02月17日、中国山東省の『山東泰山鋼鉄』の本社前に群衆が詰めかけ「金返せー」などと連呼する事態が発生しました。

賃金未払や投資したお金が返ってこないというので怒りの民衆が押し寄せる――という、もはや中国では珍しくもない光景です。

しかし「鉄鋼企業」であるという点にポイントがあります。Money1でもご紹介してきたとおり、2023年から中国の製鉄企業は業績が傾き、中国でも名の知られた会社がバタバタと倒れているのです。


↑『山東泰山鋼鉄』の公式サイト。

『山東泰山鋼鉄』は1994年05月06日に設立された企業。鉄鋼生産を主軸とし、多角的な事業を展開する大型企業グループ。山東省では唯一の一貫生産型ステンレス鋼メーカー であり、山東省最大の冷延薄板生産拠点を持ちます。

中国の製鉄企業は全然大丈夫じゃない!

2024年10月25日、『中国鉄鋼工業協会』(China Iron and Steel Association:略称「CISA」)が記者会見を開催。

この記者会見において、同協会は「中国は世界最大の鉄鋼市場であり、年間消費量は8億トンを超えます。製造業が産業成長の主要な推進力として台頭しており、同時に産業構造の改善も進んでいる」と述べました。

つまり、鉄鋼業において中国企業の業績は危険な状態ではあるものの、中国には年間消費量8億トンの市場があって「大丈夫だあ」としたわけです。

何が大丈夫なもんか」で、そもそも最大の顧客である不動産市場が壊滅状態ですし、中国の粗鋼生産能力は10億トンもあるのです。その過剰生産性を海外輸出に振り分けているため、韓国『POSCO(ポスコ)』の業績が傾いているぐらいなのです。

明らかに過剰生産なので鉄鋼価格が下落。一方で原材料コストが高騰し、鉄鋼企業の利益が大幅に圧迫されています。――結果、多くの大手鉄鋼メーカーが深刻な赤字に陥り、経営難が続いているのが実情です。

地方政府のお金をせびられて不渡り出しまくり!

今回の本線、『山東泰山鋼鉄』騒動に戻ります。

しかも調べてみると、この騒動を起こした『山東泰山鋼鉄』は不渡りの常習犯です。中国の上海票据交易所が02月13日に発表した2025年01月の「不渡り手形リスト」および「継続不渡りリスト」によると、

●泰山鋼鉄は2024年からすでに何度も手形の不渡りを起こしていた。それまでは「財務担当者が支払い通知を見落とした」などの理由をつけて、月末には清算していた。

●2024年12月には4.44億元の商業手形が未清算となり、ついに「継続不渡りリスト」に登録。

●上海票据交易所は規定に基づき、『山東泰山鋼鉄』の手形取引(手形の承認・割引・担保・保証など)を2年間停止した。

●2025年01月末には不渡り額がさらに増え「11.72億元」に到達。

●手形の未決済残高は「27.66億元」ある。

――というのが経緯・内幕で「今後さらに不渡りが増える可能性がある」のです。「11.72億元」は、2025年02月18日のレートで「約245.8億円」、「27.66億元」は「約581.1億円」です。

さらに『Radio Free Asia』の報道によれば――、

●過去2年間で、山東省済南市萊蕪区政府は『山東泰山鋼鉄』に工場の移転を命じ、補償を約束したが、実際には補償が行われていない。

●2024年、政府は『山東泰山鋼鉄』から数億元を借りて公務員の給与支払いに充てた。

これによって『山東泰山鋼鉄』の資金繰りが断絶し、破産の危機に直面。

●投資家の資金も回収不能となり、取引先未払い代金の支払いも滞っている。

――とのことで、何のことはない、地方政府の不手際が企業にも及んで事実上破綻しているわけです。これは当然地方政府の責任ですが、怒りの民衆が詰めかけてるのも当然といえるでしょう。

毎度おなじみの『X』アカウント「李老師不是你老師」 さんの投稿も「02月17日、山東省済南市萊蕪区で泰山鋼鉄の資金繰りが破綻し、約千人の投資家が会社に対して抗議活動を行った」としています。

中国はもう無茶苦茶です。

(吉田ハンチング@dcp)

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