2025年05月23日(現地時間)、アメリカ合衆国のトランプ大統領は「原子力発電設備容量を2050年までに400GWに引き上げる」という内容の大統領令に署名しました。
一応、大統領令の大事なポイントを以下に和訳しますが、面倒ください方は飛ばしても大丈夫です。
↑2025年05月23日に出た大統領令。「原子力発電を推進する」という内容です。(前略)
第2条.政策.合衆国の政策は、以下のとおり:(a)合衆国を原子力エネルギーのグローバルリーダーとして再確立すること;
(b)第3世代+および第4世代原子炉、モジュール式原子炉、マイクロ原子炉を含む新たな原子炉技術の導入を促進するため、規制やコストの参入障壁を低減すること;
(c)2024年の約100GWから2050年までに400GWへ、米国の原子力エネルギー容量を拡大すること;
(d)新しい原子炉設計のモデル化、シミュレーション、試験、承認を安全に加速するため、新興技術を活用する;
(e)現在の原子力発電所の継続的な運転を支援し、適切な運転延長を促進するとともに、早期に閉鎖されたまたは未完成の原子力施設の再開を促進する;および
(f)アメリカ合衆国の原子力安全におけるリーダーシップを維持する。
(後略)⇒参照・引用元:『White House』公式サイト「ORDERING THE REFORM OF THE NUCLEAR REGULATORY COMMISSION(原子力規制委員会の改革に関する命令)」
これはけっこう無茶なプランで、原子力発電量を現在の4倍に増やすことを意味するからです。
合衆国はこれまで商業用原発を合計135基(117GW)建設※しましたが、すでのそのうちの41基(20GW)は閉鎖されています。
現在は94基(97GW)が稼働中ですが、400GWまで増やすなら、あと約300GW足りません。ざっくり原発1基が1GW発電できるとして、今後25年間で原発300基を造らないとならないのです。
つまり、1年ごとに12基造らないと達成できません。これほどのスピードで原発を建造できるのか――なのですが、今回のトランプ大統領の発表で喜んでいるのが――韓国です。
なぜか「韓国の出番だ」の盛り上がっています。
『朝鮮日報』は「K-原発のチャンス」という記事を出しています。同記事から一部を以下に引きます。
(前略)
合衆国市場での原発ルネサンスは、K原発に新たなチャンスをもたらすと期待されている。数十年にわたり新規建設が途絶え、自国内の原発エコシステムが崩壊した合衆国にとって、パートナーは不可欠だ。
今年初め、政府間の「原発同盟」に続き、代表的原発企業の『KHNP』(韓国水力原子力)と合衆国『ウェスティングハウス』が協力を約束しており、韓国こそ最適の相手だという。
1978年の古里1号機から、昨年着工した新ハヌル3・4号機まで、40年以上にわたり国内で原発32基を建設し施工能力を蓄積してきた韓国は、設計と基盤技術で強みを持つ合衆国の弱点を補えるパートナーとされる。
『ウェスティングハウス』は以前、ブルガリア・コズロドゥイ原発事業で合衆国企業ではなく現代建設を施工会社に選んだこともある。
1970年代、合衆国原発産業が全盛期だった頃、『ウェスティングハウス』の従業員数は5万5,000人に達したが、2023年にはその6分の1にも満たない約9,000人に縮小している。
(後略)
『ウェスティングハウス』が事業縮小しており、もはや韓国に頼るしかあるまい――的な皮算用が働いている模様。「韓国こそ最適の相手だ」などと書いていますが、果たしてそうでしょうか。
Money1でもご紹介したとおり、韓国の外国での原発受注では『ウェスティングハウス』と戦っていますし、合衆国内での事業で韓国企業に発注したりするでしょうか。
造船業では確かに艦艇のリニューアルを任せたりしていますが……。
「ヌカ喜びに終わらないかどうか」要注目です。
(吉田ハンチング@dcp)