2020年11月05日、『韓国銀行』が2020年09月末時点での「国際収支統計」(暫定版)を公表しました。「経常収支」が「102億1,390万ドルの黒字」という結果で、単月の「経常収支」で100億ドルを超えたのは実に2018年09月以来のことです。
今回の09月の100億ドル超えは異常とも思える黒字です。なぜ、このようなことが起こったのでしょうか。
まず経常収支を分解してみる
経常収支は「貿易収支」「サービス収支」「第1次所得収支」「第2次所得収支」の4つの大きな項目の合計です。
今回公表された国際収支統計の中身を見ると、それぞれの金額はこうなっています。
サービス収支:-20億4,050万ドル
第1次所得収支:6億770万ドル
第2次所得収支:–3億7,520万ドル
小計 = 経常収支:102億1,390万ドル
先に韓国の経常収支の構造のご紹介をした際に用いた図を再度以下に掲載します。これは2017年01月~2020年06月までの、経常収支の4つの要素の平均金額を示しています。
韓国は「貿易収支」が大きく、他の3つの項目の金額は小さくなっており、とにかく貿易収支が大きな黒字でなければ国が回らない仕組みになっています。
貿易収支は「輸出 – 輸入」で求めますので、輸出が大きくないと国が回りません。韓国が輸出1本で食べている国という所以(ゆえん)はここにあります。
以下に上掲の数字と今回の09月の結果を比較します。
2017-2020平均 | 2020年09月 | |
貿易収支 | 77億2,700万ドル | 120億2,190万ドル |
サービス収支 | -23億2,200万ドル | -20億4,050万ドル |
第1次所得収支 | 6億2,700万ドル | 6億770万ドル |
第2次所得収支 | -5億1,200万ドル | -3億7,520万ドル |
貿易収支だけが突出して、平均値より約43億ドルも多いことが分かります。
貿易収支の巨額黒字の原因は何か?
この巨額の貿易収支のもうけは以下の「輸出」「輸入」からきています。
輸出金額:498億4,850万ドル
輸入金額:378億2,660万ドル
「輸出 – 輸入」 = 貿易収支:120億2,190万ドル
まず、この輸出金額の「約498.5億ドル」が異常な金額です。
これは、主に09月の通関作業を行える営業日数が2.5日多かったためと考えられます。先にご紹介しましたが、2020年09月は輸出金額は1日平均「約21億ドル」でした。これは韓国の輸出が回復してきていることを示す数字ではあります(長くなるので別記事にしますが半導体が大きな役割を果たしました:『ファーウェイ』特需があったので)。
ですので、輸出が回復してきて、また営業日数が多かったために金額が「498.5億ドル」に達したわけです。
※ただし、2020年10月01日韓国関税庁の報告では「09月の輸出金額は480.5億ドル」となっていました。しかし、今回の発表では「498.5億ドル」です。なぜ「18億ドル」も増えたのかは分かりません。
さらに輸入が回復していない!
貿易収支は「輸出 – 輸入」で求めますので「輸入金額」にも注目する必要があります。前記のとおり、2020年09月の「輸入金額」は「378億2,660万ドル」でした。実は、輸出は大きく伸びたのに輸入がそこまで伸びていないのです。
09月の「輸出金額:498.5億ドル」というのは、近似値を求めると「2018年12月:497.7億ドル」という数字があります。また、「2019年01月:495.3億ドル」があります。
このとき輸入金額がいくらだったかというと……。
輸出金額:497.7億ドル 輸入金額:431.5億ドル
2019年01月
輸出金額:495.3億ドル 輸入金額:437.8億ドル
いずれも輸入金額は「430億ドル」を超えています。
ところが、2020年09月の結果は「輸入金額:378.3億ドル」と低い水準にとどまっています。そのため、輸出金額が突出したぶん輸入金額との差が大きくなり、それで「貿易収支」が大きく膨らんだわけです。
つまり、
しかし、輸入金額はそれに見合った増え方をしていない。
そのため貿易収支の黒字幅が大きくなった。
しかし、サービス収支、第1次所得収支、第2次所得収支の3つには大きな変化がなかったこれが2020年09月の経常収支が100億ドルを超えた理由です。また「不況型黒字」を脱出したわけではありません。
⇒データ引用元:『韓国銀行』公式サイト「Ecomic Status System(略称「ECOS」)」
(柏ケミカル@dcp)