2021年02月05日、『韓国銀行』が2020年12月の国際収支統計を公表しました。暫定版ながら、これで2020年通年のデータがそろったことになります。先に月次の件はご紹介しましたが、通年の「経常収支」を見てみます。
・貿易収支:819億4,500万ドル(対前年比:2.7%増加)
・サービス収支:-161億9,000万ドル(対前年比:39.7%減少)
・第1次所得収支:354億ドル(対前年比:6.3%減少)
・第2次所得収支:-25億3,000万ドル(対前年比:58.8%減少)
経常収支(上記4つの合計):752億7,600万ドル(対前年比:26.1%増加)
※「サービス収支」「第2次所得収支」は前年もマイナスで、そのため○%減少はそのぶん赤字が減ったことを意味します
この結果に対して、例えば韓国メディア『毎日経済』では、
と書いています。本当に快挙でしょうか。以下の2016年から2020年までの経常収支と、それを構成する4つの要素(貿易収支・サービス収支・第1次所得収支・第2次所得収支)の推移を以下に示します。
青い数字の入ったラインが経常収支(貿易収支・サービス収支・第1次所得収支・第2次所得収支の合計)です。確かにコロナ禍の中、前年の「約597億ドル」から「約753億ドル」へと大きく増加しています。その増加幅は「156億ドル」です。
しかし、オレンジの貿易収支のラインを見てください。ほとんど横ばいです。つまり韓国にとって一番大事な輸出入による利益は前年と変わらなかったわけです。なのに、なぜ経常収支は156億ドルも増えたのでしょうか?
理由はグレーのライン「サービス収支」にあります。韓国のサービス収支は一環して赤字で、つまりグラフでいえば0の下にあるのですが、この赤字が減少したのです。
2019年:-268億4,500万ドル
2020年:-161億9,000万ドル
なんと106億5,500万ドル(上記のとおり39.7%減少)も赤字が減りました。これが経常収支が大きく増えた理由です。
ではなぜサービス収支の赤字がこれほど減ったかというと、「サービス収支」は海外とのサービスのやりとりを計上する項目であるのが理由です。コロナ禍によって海外旅行も減るし、海外とのサービスのやりとりが減少したためです。韓国は景気がよく日本旅行がブームだった2017年には、サービス収支は「367億3,400万ドルの赤字」でした。
ですので、企画財政部の第1次官が誇るような結果ではありません。コロナ禍が終息すればサービス収支の赤字は元に戻るからです。その上、先にご紹介したとおり、貿易収支の黒字は「輸入が激減したおかげの不況型黒字」の結果なのです。
喜んでいる場合でしょうか。
(柏ケミカル@dcp)