韓国が信用格付けの低下について異常に恐れていることについては先にご紹介しましたが、では日本はどうなのでしょうか?
実は、日本の財務省は、信用格付け会社の査定による「評価の低下」に対して自サイトで文書を公開して反論を行っています。有名な文書ではありますが、ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんのであらためてご紹介します。
上掲は財務省のホームページですが、2002年05月02日、2002年05月23日、2002年05月31日、2002年07月25日、2003年07月28日と5回に渡って文書を公開しています。
05月23日版では『Moody’s(ムーディーズ)』『Fitch(フィッチ)』あてに分かれており、05月31日版は『S&P(エス・アンド・ピー)』あてですので、世界三大格付け会社相手に戦ったことになります。
以下に「外国格付け会社宛意見書要旨について(2002年5月2日)」を引用します。
外国格付け会社宛意見書要旨
1.貴社による日本国債の格付けについては、当方としては日本経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更なる格下げは根拠を欠くと考えている。貴社の格付け判定は、従来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。
従って、以下の諸点に関し、貴社の考え方を具体的・定量的に明らかにされたい。
(1)日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。(2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。
例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている
・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高
(3)各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように説明されるのか。
・一人当たりのGDPが日本の1/3でかつ大きな経常赤字国でも、日本より格付けが高い国がある。
・1976年のポンド危機とIMF借入れの僅か2年後(1978年)に発行された英国の外債や双子の赤字の持続性が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維持した。
・日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同格付けとなる。
2.以上の疑問の提示は、日本政府が改革について真剣ではないということでは全くない。政府は実際、財政構造改革をはじめとする各般の構造改革を真摯に遂行している。同時に、格付けについて、市場はより客観性・透明性の高い方法論や基準を必要としている。
⇒参照・引用元:『日本国 財務省』公式サイト「外国格付け会社宛意見書要旨」
日本の格付けを下げる合理的な説明ができるのなしてみろよ、とスゴんでいるかのような、非常に面白い内容で、財務省の皆さんが格付け会社の評価に対して非常に怒っている様子が伝わってきます。
注目していただきたいのは「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」としている点です。日本人が日本国債を購入している限りデフォルトは起こりませんと財務省自身が述べています。
2002年、2003年の話ではありますが。
(吉田ハンチング@dcp)