2021年07月21日、世界的格付け会社『Fitch(フィッチ)』が韓国の格付けを「AA-:安定的」で維持したと公表しました。
韓国政府はひと安心したと見えて、さっそく企画財政部が以下のようにリリースを出しています。
⇒データ引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「[報道参考】国際格付け会社フィッチ(Fitch)、韓国国家信用格付けを歴代最高等級である「AA-、安定」に維持」
『フィッチ』は、2020年11月、韓国政府との協議で、
と述べたと報じられています。つまり、政府債務が2023年までに対GDP比で46%を超えたら信用格付けを下げるという警告です。
2023年にはこの基準を超えることが予想されていますが、今回『フィッチ』が信用格付けを下げなかったのは、2020年末段階でまだ超えていない、またGDPが回復して負債比率が予定より下がると見ているためです。
『フィッチ』の公開した韓国のレーティングについてのリポートを見ると、実際には以下のように書かれているのです。
(前略)
一般政府の財政赤字は、2020年のGDP比3.7%から2021年には4.4%に拡大し、2021年の「AA」の中央値である5.3%を依然として下回ると予想しています。この予測には、国会で審議されている33兆ウォン(GDPの1.6%)の第2次補正予算が組み込まれています。補正予算による支出の増加は、前回の予算想定よりも堅調な歳入によって相殺される予定で、新たな負債調達はありません。
増収分の一部は、前回の政府予測と比較してGDP比で約1ppの債務削減に充てられます。
その結果、政府債務の増加率は前回の予測よりも小さくなり、最新のベースラインでは、2020年末の43.8%から、2021年末にはGDPの47.1%になると予測しています(AAの中央値は43.6%)。
⇒参照・引用元:『フィッチ』公式サイト「Fitch Affirms Korea at ‘AA-‘; Outlook Stable」
上掲のとおり、2020年末「43.8%」は前記の「46%」よりは低くなっており、第2次補正予算が債務を増やさないで(国債を発行しないで)行えそうであり、政府負債もまだ5.3%を超えるところまではいっていない――だから、今回はレーティングが下がらなかったのです。
しかし、上掲のとおり、『フィッチ』は2021年には韓国の国家負債の対GDP比が「47.1%」になると予測しています。
これは前記の「2023年までに46%に到達したら……」の条件に明らかに引っ掛かります。
何度もご紹介してきたとおり、このままでは「47.1%どころでは済まない」ので、2021年末の結果をもって協議することになる2022年のレーティングについての韓国政府-『フィッチ』の会合が見物です。
さらに『フィッチ』は以下のようにも書いています。「しかし」以下の文章にご注目ください。
(前略)
パンデミックによる経済的傷跡は、回復力のある経済パフォーマンスと家計への財政支援により、比較的限定されるだろう、と私たちは考えています。しかし、この国は急速に高齢化する人口による中期的な成長下方圧力に直面しています。
人口動態の悪化の影響を反映して、潜在成長率の見積もりを以前の2.5%から2.3%に下方修正しました。
現政権は、特に最近発表された「韓国版ニューディール」を通じて、生産性の成長を後押しするための支出の増加させ、これらの中期的な課題を相殺しようと努めてきましたが、これがどれほど有益であるかを評価するには時期尚早です。
(後略)※引用元は同上
人口減少による生産性の低下に直面しているので潜在成長率をこれまでの見方より下げた、「韓国版ニューディール」なるものがどこまで有効なのかは不明と正直に書いています。
今回は助かったかもしれませんが、恐らく次回はこうはいきません。もちろんそのときには、負債を急拡大させた文在寅大統領はもういませんけれども。
(吉田ハンチング@dcp)