韓国メディア『毎日経済』に面白い記事が出ました。韓国では、建築工事費が爆上がりしているので、高層ビルを建てるのにオーナーが躊躇し始めたというのです。
同記事の始まりは以下のような具合です。
「50階以上の超高層設計案を再建築組合に提示すると、みんな喜ぶんです。
しかし、予想工事費を見ると、みんな表情がこわばります。
ただでさえ工事費が天井知らずで高騰中なのに、超高層マンションは負担がさらに大きくなりますからね」
(A建設会社関係者)(後略)
建設会社の人が「ただでさえ工事費が天井知らずの高騰中」と発言したことになっていますが……ではどのくらい上がっているのでしょうか。
『住居環境研究院』の調査結果によると、ソウル整備事業(再建築・再開発など)の年度別の工事費の平均坪単価は以下のように推移しています。
全くの余談ながら、韓国では「3.3平方メートル」単位での工事費(あるいは単価)が表示されることが多いです。これは日本で使っている「坪」と同じ面積です。つまり「1坪ナンボなん?」なので、実は日韓は比較しやすいのです。
坪はともかく、上掲のとおり坪単価の平均工事費は上掲のとおり、まさにうなぎ上り。
「そのうち坪単価の工事費は1,000万ウォンを超える」という声も上がっています。
とにかく人件費はもちろんのこと、生コン、鉄筋など何もかもが上昇しています。Money1でもご紹介してきましたが、「現場に生コンが来なーい!」という「セメント大乱」が起こるぐらいなのです(2022年)。
「建物の階数を減らそう!」という話
上掲のように工事費が爆上がりなので、再建築・再開発予定の建物で、当初の超高層プランはやめて「低くしよう」という話が出ているとのこと。
(前略)
ソウル開浦の団地は昨年、ソウル市の35階建てルールの廃止に伴い49階建て建て替えを検討したが、既存の案どおり35階建てで進めることにした。階数を増やすと事業期間が長くなり、全体的な費用負担が増えるという判断からだ。
盤浦の団地でも最高階数を49階まで上げることを検討したが、35階建てで再建を推進することにした。
(後略)
一方で、超高層のプランのママでいこうという選択をするマンションもあります。
漢江沿いの70階以上の再建を推進していた聖水戦略地区内の1地区と4地区では、オーナーさんによる投票を行ったのですが、双方では困った決定となりました。
1区では、僅差(50.97% vs 47.47%)ながら50階未満を選択。一方の4区は「超高層の77階建て」を選択したのです。
「77階建て」というのはスゴイです。オーナーさんが納得しているならいいのでしょうが、お金は大丈夫なのかという懸念も出ます。これから工事費が予想より上がると、「工事費が足りません」といった事態になるかもしれません。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は、再建築・再開発についての規制を緩和し、不動産業界を低迷から救う一助とするつもりですが、工事費の値上がりに足を引っ張られることになるかもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)