中国政府の財政が傾いているのではないか、というデータが出ました。
2024年08月26日、中国財政部が公表したデータをまずご覧ください。以下に一応全部和訳します。面倒くさい方は、この引用部分を飛ばしても大丈夫です。
2024年07月の財政収支状況
1. 全国一般公共予算の収支状況
(1)一般公共予算の収入状況
01月から07月までの全国一般公共予算の収入は13兆5,663億元で、前年同期比で2.6%減少しました。ただし、前年同期における中小企業向けの納税延期措置や、昨年中頃に導入された減税政策の影響を考慮した場合、実質的な増加率は約1.2%となります。
中央と地方の内訳:
01月から07月までの中央政府の一般公共予算収入は5兆9,745億元で、前年同期比で6.4%減少。地方政府の一般公共予算本級収入は7兆5,918億元で、前年同期比で0.6%増加。
税収と非税収入の内訳:
01月から07月までの全国税収は11兆1,240億元で、前年同期比で5.4%減少。
非税収入は2兆4,423億元で、前年同期比で12%増加。主要な税収項目の状況:
国内増値税:4兆1,303億元、前年同期比で5.2%減少。
国内消費税:1兆4億元、前年同期比で5.5%増加。
企業所得税:3兆702億元、前年同期比で5.4%減少。
個人所得税:8,529億元、前年同期比で5.5%減少。輸入貨物増値税・消費税:1兆966億元、前年同期比で1.8%増加。
関税:1,407億元、前年同期比で3.7%減少。
輸出還付税:1兆2,824億元、前年同期比で14.6%増加。
都市維持建設税:3,022億元、前年同期比で6.2%減少。
車両購入税:1,449億元、前年同期比で6.5%減少。
印紙税:2,120億元、前年同期比で20.9%減少(内訳:証券取引印紙税は576億元、前年同期比で55%減少)。
資源税:1,776億元、前年同期比で7.5%減少。土地および不動産関連税収:
契税:3,169億元、前年同期比で10.9%減少。
房産税:2,878億元、前年同期比で20.2%増加。
城鎮土地使用税:1,562億元、前年同期比で11.2%増加。
土地増値税:3,388億元、前年同期比で7.2%減少。
耕地占用税:890億元、前年同期比で23.6%増加。
環境保護税:169億元、前年同期比で15.6%増加。
車船税、船舶トン税、煙草税などその他の税収合計:730億元、前年同期比で3.1%増加。(2)一般公共予算の支出状況
01月から07月までの全国一般公共予算の支出は15兆5,463億元で、前年同期比で2.5%増加。中央と地方の内訳:
中央政府の一般公共予算本級支出は2兆1,444億元で、前年同期比で9.3%増加。
地方政府の一般公共予算支出は13兆4,019億元で、前年同期比で1.5%増加。主要な支出項目の状況:
教育支出:2兆3,115億元、前年同期比で1.1%増加。
科学技術支出:5,165億元、前年同期比で3.8%増加。
文化、観光、スポーツ、メディア支出:1,911億元、前年同期比で1.1%増加。
社会保障と雇用支出:2兆5,454億元、前年同期比で4.3%増加。
衛生健康支出:1兆1,804億元、前年同期比で12%減少。
省エネ環境保護支出:2,828億元、前年同期比で2.9%増加。
都市と農村コミュニティ支出:1兆1,589億元、前年同期比で7.2%増加。
農林水支出:1兆3,350億元、前年同期比で8.2%増加。
交通運輸支出:6,559億元、前年同期比で0.5%増加。
債務利息支出:7,116億元、前年同期比で5.8%増加。2. 全国政府性基金予算の収支状況
(1)政府性基金予算の収入状況
01月から07月までの全国政府性基金予算の収入は2兆3,295億元で、前年同期比で18.5%減少。中央と地方の内訳:
中央政府性基金予算収入は2,386億元、前年同期比で7.8%増加。
地方政府性基金予算本級収入は2兆909億元、前年同期比で20.7%減少(内訳:国有土地使用権譲渡収入は1兆7,763億元、前年同期比で22.3%減少)。(2)政府性基金予算の支出状況
01月から07月までの全国政府性基金予算の支出は4兆1,228億元で、前年同期比で16.1%減少。中央と地方の内訳:
中央政府性基金予算本級支出は1,282億元、前年同期比で43%増加。
地方政府性基金予算支出は3兆9,946億元、前年同期比で17.2%減少(内訳:国有土地使用権譲渡収入関連支出は2兆5,098億元、前年同期比で8.9%減少)。
公表されたデータが示唆するのは「政府財政の逼迫」
まず、ご注目いただきたいのは全体の動向です。
2024年01~07月累計 中国政府財政
収入:13兆5,663億元(-2.6%)
支出:15兆5,463億元(+2.5%)
収支(収入 – 支出):-1兆9,800億元※( )内は対前年同期比の増減
対前年同期比で、収入が減少(-2.6%)して、支出が増加(+2.5%)しています。収支は約-2兆元。天地が5%を超えていますが、そのぶん中国政府の財政収支が悪化しているわけです。
特に注目したいのは収入の「税収と非税収入の内訳」です。
非税収入:2兆4,423億元(+12%)
国税収入が「-5.4%」と減少しているのに、非税収入が「+12%」と大きく伸びています。
なぜでしょうか? 非税の収入とは何でしょうか?
これは中国で今拡大している「動き」と附合します。
「罰金の徴収」です。
※ただし地方政府の非税収入の増加を支えている主な要因は「資産処分」によるものと推測できます。
地方政府が財政難に陥っており、それを埋めるために公安(警官)などを動かして中国の皆さんから非税収入を上げることに血道を上げているのです。これには、罰金や手数料の徴収が含まれ、特に公安機関を利用した取り締まり活動が強化されています。交通違反や環境規制の違反に対する罰金の増加は、その一例です。
実際、これによって非税収入が急増していることが報告されています。
さらにご注目いただきたいのは「政府性基金※収入と支出の減少」です。特に以下の地方政府分です。
内⇒国有土地使用権譲渡収入:1兆7,763億元(-22.3%)
※( )内は対前年同期比の増減
上掲のとおり、地方政府性基金予算の収入が20.7%も減少しており、その主な要因は国有土地使用権譲渡収入の22.3%減少です。
これは明らかに「不動産市場の低迷」を示唆しています。
なぜなら、土地使用権の販売こそが地方政府にとって重要な財源だからです。これが減少するということは、地方財政に深刻な影響を与えていることを意味しています。
だからこそ、中国地方政府の財政は傾いており、住民から罰金を取ることに勤しんでいるのです(資産の売却も行っている)。
――というわけで、中国の不動産市場が回復するなどとはとても思えませんし、中国政府の財政も傾いています。
(吉田ハンチング@dcp)