韓国最大手の鉄鋼メーカー『POSCO(ポスコ)』の2025年第2四半期の業績は、対前年同期比「営業利益:-18.7%」「当期純利益:-85.5%」とひどい結果になりました。
『ポスコ』だけではありません。韓国の鉄鋼業は危機に瀕しています。
そもそも需要が減少しているのです。例えば鉄筋の需要は以下のとおりです。

データ出典:『韓国鉄鋼協会』/2025年は予測
建設業界が不況に陥っており、その余波で「鉄」の需要が減っています。その上、大迷惑なことに中国鉄鋼企業が過剰生産性を発揮して「安値」で韓国に輸出しているのです。
安値の叩き合いでは、中国企業には絶対に勝てません。
これで韓国鉄鋼企業の業績が良くなるわけはないのです。
関税50%では鉄鋼輸出が不可能な水準だ
さらにまずいことに、アメリカ合衆国が韓国の鉄鋼輸出に高関税をかけています。
「50%」です。
2025年03月12日より鉄鋼・アルミニウム輸入に対して 25%の関税 が発効しました。
その後、同年06月04日に対象国すべてで関税率が25% ⇒ 50%に上げられました。
韓国もこの対象国に含まれており、韓国製鉄鋼にも 06月4日以降、50%の関税が適用されています。
2025年07月31日に、アメリカ合衆国と韓国は「相互関税」について15%と妥結されましたが、鉄鋼については50%のママです。
そのため、韓国では「50%が固定されたのでこのママでは輸出もできなくなる」という悲鳴が上がっているのです。
例えば『ソウル経済』の記事では以下のように書いています。
(前略)
各種製造業界の原材料供給元である鉄鋼業界は、非常事態に陥っている。25%の関税が課された3月、そして関税率が50%に引き上げられた06月にも、鉄鋼業界は韓米協議に一縷の望みをかけていた。
業界では、ドナルド・トランプ政権1期目の時のように、クオーター制が適用されるのではないかとの見方も出ていた。
目下、鉄鋼業界は、日本や欧州連合(EU)など主要な競合国も同じく50%の関税が適用されていることから、輸出競争の出発点は同じだと見ている。
しかし、合衆国内で生産された鉄鋼とは競争にすらならないという意見が大多数である。国内生産の原価や物流費に加え、50%の関税が課されると、合衆国内では価格競争力を完全に失うというのだ。
特に日本は、『日本製鉄』が合衆国鉄鋼会社『USスチール』を買収したことにより、合衆国で鉄鋼を生産できるようになった。
関税率が同じであっても、合衆国現地に生産施設を持たない『ポスコ』や『現代製鉄』は競争で後れを取らざるを得ない構造である。
(中略)
業界では、下半期から関税ショックが現実化すると見ている。
通常、契約と出荷の間には3~4カ月ほどのタイムラグがあるためだ。
しかし、既に対米鉄鋼輸出には打撃が及んでいる。
産業研究院によれば、01~04月の韓国の全世界向け鉄鋼輸出額(合衆国を除く)は前年同月比で2.6%減少したが、同期間の対合衆国鉄鋼輸出は10.2%減少した。
鉄鋼業界のある関係者は、「関税25%の時は輸出・輸入業者が関税を半分ずつ負担して輸出が可能だったが、50%の関税ではもはや輸出が不可能な水準だ」と述べ、「関税が課されれば、現代製鉄の新製鉄所建設費用も上昇せざるを得ず、負担は増加する」と語った。
(後略)
――というわけで、韓国は鉄鋼業でも危機に陥っているのです。
『日本製鉄』は合衆国鉄鋼会社『USスチール』を買収したので、関税に関係なく合衆国市場にアクセスできるというのに――という嘆き節が出ています。

(吉田ハンチング@dcp)






