韓国は、03月19日09:00(アメリカ合衆国東部夏時間)に電撃的に発表された「他の中央銀行とのドル流動性スワップ※1」について、さっそく利用するための交渉を始めたようです。
2020年03月25日、韓国メディア『ソウル経済』に「韓米通貨スワップ資金来週中供給」という記事が出ました。
⇒参照・引用元:『ソウル経済』「韓米通貨スワップ資金来週中供給」(原文・韓国語)
https://www.sedaily.com/NewsView/1Z0C3OXKQ8
同記事内では以下のようになっています。
韓国銀行は25日、「米国の連邦準備制度(Fed・FRB)との実務協議を進行中」とし「今週中に本契約書を作成し、来週に資金を供給するスケジュールを目標にしている」と述べた。
米FRBとの協議内容は、主に供給方式に関する事項として、△1次供給量△供給方式△金利などである。今回の韓米通貨スワップの全体限度は600億ドルと定められているが、一度に600億ドルを供給するのではなく、数回に渡って分け供給することになる。
先の記事でもご紹介しましたが、スワップラインは二回の取引で完了します。
①その時の市場為替レートによって等価になる自国通貨を用意し、中央銀行同士でこれを交換する(swap)
②返済期限が来たら、あらかじめ決めておいた為替レートで等価になる相手国の通貨を用意してこれを交換する(swap back)
つまり、今回はドル流動性スワップですので、「100億ドル」を交換するのなら期限日には「100億ドル」返せ、というわけです。
で、①の取り引き時には、FEDは韓国銀行に100億ドルを振り込みますが、その代わりに取引時の為替レートで100億ドル分になるウォンをFEDに振り込め、というわけです。
②の取引ですが、FRBによると、このドル流動性スワップでは、「あらかじめ決められた(①の取り引き時の)為替レートを使って返済する」となっています。
これは合衆国が損をしないための取り決めでもあります。もしこれが返済時の為替レートですと、その時に為替レートが変動し、「100億ドル返ってくるはずが、90億ドルになっちゃった」なんてことがあり得ます。これを防ぐためですね。
FRBは、
Accordingly, these swap operations carry no exchange rate or other market risks.
したがって、このスワップラインによるやり取りには為替リスクやその他市場のリスクはありません。
と説明しています。
また、慈善事業ではないのできちんと利息が取られます。以下のFRBによる説明をご覧ください。
(前略)
At the conclusion of the second transaction, the foreign central bank pays interest, at a market-based rate, to the Federal Reserve.
(後略)2番目の取引の終了時に、外国の中央銀行は市場ベースのレートで連邦準備制度(担当はNY連邦準備銀行:筆者注)に利息を支払います。
ですから、例えば100億ドルをドル流動性スワップで提供されたからといって「100億ドル手に入った!」と諸手を挙げて喜んで入る場合ではないのです。返すときは100億ドル以上返済するのですから。
この利率は、同じECB(欧州中央銀行)相手でも「7日間、1.24%」「7日間、2.08%」※2などと変化します(NY連銀はこのスワップラインの動きを毎週サイトで公開しています※3)。
ちなみに毎週のスワップラインの動向報告は以下のような形で行われています。
これは、ECB(欧州中央銀行)とFEDが「03月11日~03月18日」に行った「5,800万ドル」のドル流動性スワップのリポートです。表の詳細についてはまた別記事でご紹介しますので、ここでは「ああ、こういう報告をしているんだ」と眺めるだけで十分です。
韓国がスワップラインを利用すればこのようなリポートが出るはずです。
「40億ドルをはるかに超える金額」を狙っている! 一応「借金」ですよ
上掲の『ソウル新聞』の記事では、
韓国銀行関係者は、「2008年の世界的な金融危機の時締結した韓米通貨スワップ限度は300億ドルであり、5回の入札を実施し、合計164億ドルを供給した」とし「当時は1次から40億ドルを供給した。今回は、1次でこれよりはるかに大きな金額を供給する計画だ」
となっています。つまり、いきなり「40億ドルをはるかに上回る金額」をスワップしようというわけですが、利息がつくのを忘れないようにしたいところですね。
※1韓国メディアでは「通貨スワップ協定」あるいは「通貨スワップ」としていますが、紛らわしいので合衆国FRBの呼称に従い、「スワップライン」、中でもドルの流動性を確保するためのスワップラインですので「ドル流動性スワップ」と記載します。
※2念のための注ですが、この利率は年利です。7日間の利率がどうなるかというと「(1.24% ÷ 365日) × 7日間」と計算されます。1日当たりの利率を計算してこれに日数をかけるわけです。
※3先の記事でご紹介したとおり、イングランド銀行、ECB(欧州中央銀行)、日本銀行、スイス国民銀行(日本銀行の記載に倣います)、カナダ銀行には「週次」ではなく「日次」でも可能なように拡充されましたが発表がどうなるのかはまだ不明です。
(柏ケミカル@dcp)