2026年07月12日、韓国大統領府の政策室長である金容範(キム·ヨンボム)さんが自身のFacebookに、また面白い投稿を行いました。
例えば『中央日報(日本語版)』は、「韓国は日本を模倣してきたが、その道からもっとも速く抜け出せる」という部分に注目して記事を出しています。
しかし、そのような箇所はむしろ些末な部分であって、この金容範(キム·ヨンボム)さんが韓国政府の経済政策をどのようにしようとしているのか――が問題です。
非常に長いですが、以下に全文を和訳します。
〈バイバイ、東アジア停滞論〉
経済にはサイクルがあり、トレンドがある。サイクルは繰り返される。
半導体が回復し、金利が上下し、株価は数年ごとに反騰と調整を繰り返す。しかし、経済史を実際に変えるのはサイクルではなく、長期トレンドの傾きだ。
一国を説明してきた成長の文法が変わり、市場がその国の未来を見る基準そのものが変わる瞬間は、10年、20年に一度訪れるかどうかだ。今、東アジアでそのような変化が現れている。
2022年から2024年まで、韓国、日本、中国はいずれも揺らいだ。
しかし、揺らいだ理由も、その後に歩んだ道も互いに異なっていた。中国は、自ら設計した国家主導の構造転換を引き続き押し進めた。
日本は、デフレ脱却と資本市場改革を試みた後、今や金利と財政という新たな均衡を見いださなければならない段階に入った。
そして韓国は、3カ国のうち最も深い悲観から出発し、まったく異なる成長経路を試し始めた。
2025年、平均は平凡だったが、トレンドは変わった
韓国の2022~2024年は暗鬱だった。
半導体のダウンサイクルが輸出を押し下げ、KOSPIは米国株式市場との連動の流れが崩れ、長期間低迷した。
中国の不動産不況とも一部連動し、韓国経済は東アジア低成長の代表的事例として取り上げられ始めた。2023年の実質成長率は1%台まで低下し、「ピーク・コリア論」が勢いを得た。
レゴランド事態によって不動産PFリスクが表面化し、2024年末には政治的混乱まで重なった。サイクル、金融、政治の危機が一度に押し寄せた時期だった。
当時、韓国経済を説明する言葉は、成長よりも衰退に近かった。
ところが、2025年は奇妙な年だった。
年間成長率だけを見れば、特別なところのない年だ。上半期は政治的混乱と景気萎縮により、事実上足踏みした。
下半期から雰囲気が変わったが、偶然にもその転換点は新政権の発足時期とほぼ重なる。
同じ時期に、AIが引き起こした半導体スーパーサイクルも本格化した。いずれか一つの要因だけで、現在の変化を説明するのは難しい。ただ、政策の方向と産業サイクルが同じ方向へ動き始めたという事実だけは明らかだ。
それが偶然だったのか必然だったのかは、さらに時間がたたなければ分からないだろうが、トレンドラインが方向を変えた時点が2025年半ばだったという点は明確だ。
政治的不確実性が収拾され、政策の方向が整理されていたその時期に、メモリー需要、データセンター投資、先端パッケージング、電力インフラ拡大が一度にかみ合い、輸出と企業利益が急速に回復した。
経済史において、政策と産業サイクルが同じ方向へ動く時期はまれだ。
通常は、政策がサイクルに逆らうか、サイクルが政策を圧倒する。二つの力が互いを増幅させる瞬間は珍しいが、2025年下半期の韓国が、そのような局面に入ったものとみられる。
したがって重要なのは、2025年の年間成長率そのものではなく、トレンドラインが方向を変え始めたという事実だ。
成長率見通しは相次いで上方修正され、韓国は2026~2027年に先進国の中で最も高い成長率が予想される国として、再評価され始めた。
東アジア低成長の代表的事例として取り上げられていた国が、先進国の中で最も強い成長の勢いを持つ国として評価され始めたのである。
これを単純な反騰としてだけ見るのは難しい。市場は韓国経済の長期トレンドラインを描き直している。
つい最近まで、韓国経済では1%台の低成長がニューノーマルだという認識が強かった。
ところが今では、2%台後半の成長率が現実的な見通しとして取り上げられ、しばらくの間、非現実的に聞こえていた潜在成長率3%回復までもが、まったく手の届かない目標ではないという議論が出始めた。
重要なのは数字そのものではない。不可能だと考えられていた成長経路が、再び政策と市場の議論の中に入ってきたという事実だ。
変化が始まってから、まだ1年にも満たないため、長期トレンドが完全に変わったと断定するのは早い。それでも、成長率見通しの上方修正幅、資本市場での再評価の速度、政策と産業サイクルがかみ合った強さは、ここ数十年の韓国経済では容易に見いだしにくい水準だ。
今現れている変化を、単なる景気回復ではなく、長期トレンドそのものが変わる可能性を示す初期局面として読み取るべき理由である。
株式市場も同じシグナルを送った。
2023~2024年に市場が投げかけた問いは、「韓国は終わったのか」だった。
現在、市場が投げかけている問いは、「半導体サイクルはいつピークアウトするのか」だ。
国家の運命を懸念していた議論が、産業サイクルの持続期間を論じる段階へ移ったということ、この変化は考えているよりも大きい。
製造業がエンジンなら、資本市場は変速機だ
今回の反転を半導体一つだけで説明すれば、最も重要な部分を見落とす。
半導体は出発点にすぎず、本当の変化は、生産能力の拡大と生産成果の資産化が同時に推進され始めたという点にある。
半導体とAIデータセンター、フィジカルAIを軸とする3大メガプロジェクトは、韓国経済の生産能力そのものを、もう一段階引き上げようとする大胆な産業政策だ。
商法改正、取締役の株主に対する忠実義務の拡大、自己株式制度の改編、国民成長ファンド、生産的金融への転換は、そのように増加した生産の成果が企業内部にだけとどまらず、企業価値と国民資産を経て、再び未来産業への投資に循環するようにする作業だ。
一方がエンジンの大きさを拡大する仕事であるなら、もう一方は、その力を経済全体に伝達する仕組みを直す仕事である。
過去の韓国経済の成長の文法は単純だった。
製造業が生産し、輸出が外貨を稼ぎ、企業が投資する構造。このモデルは韓国を先進国の仲間入りさせた。
しかし、経済が大きくなるほど、生産だけでは不十分だ。生産の成果が資産につながり、資産が再び革新へつながる、もう一つの循環が必要だ。
この連結が弱ければ、企業が世界最高水準の競争力を備えていても、資本市場では過小評価される。コリア・ディスカウントの本質もここにあった。
生産というエンジンがいかに強くても、その力を伝達する変速機が正常に作動しなければ、経済全体は最高速度を出すことができない。
今、韓国が変えようとしているのが、まさにその変速機だ。製造業国家から脱却しようとしているのではなく、強い製造業の上に、強い資本市場という新たな成長軸をもう一つ載せようとする試みだ。
アメリカ合衆国の条件がなくても可能なのか
当然の反論が出てくる。
合衆国は基軸通貨を持ち、世界最大の内需市場を持ち、移民によって人口まで補充している。
韓国には、この三つがない。それならば、合衆国型の成長メカニズムは、合衆国でのみ可能なのだろうか。
AI時代には、別の可能性が開かれている。市場の大きさよりも、サプライチェーンにおいて占める位置が、さらに重要になり得るということだ。
台湾が、その可能性を示している。
基軸通貨も、巨大な内需も、大規模な移民もない国だが、世界のAIサプライチェーンにおいて代替不可能な半導体ノードを確保することで、先進国平均を大きく上回る成長を記録した。
韓国もまた、メモリー半導体とAIハードウェアにおいて、世界のサプライチェーンの中核ノードを握っているという点で、同じ可能性を示し始めた。
もちろん、台湾はもう一つの教訓も残した。産業の超格差が、直ちに国民全体の豊かさを意味するわけではないという点だ。
輸出と企業利益が急増しても、その成果が消費と資産、非IT産業へ十分に広がらなければ、経済はK字型に分かれ得る。
したがって、韓国の資本市場改革は、単に株価を引き上げる政策ではない。生産の成果を国民経済全体に広げようとする成長メカニズムの一部として見るべきだ。
同じ時期、異なる二つの国
日本は、資本市場改革という課題に先に着手した。企業統治は改善され、バリューアップも一定の成果を上げた。ただし、今や金利正常化と巨額の政府債務が、新たな負担として現れた。改革は成功したが、その費用を管理しなければならない段階に来ている。
中国は、そもそも別の道を選んだ。
不動産中心の成長モデルを自ら縮小し、先端製造業中心へと移行する国家主導の構造転換を続けた。苦痛はあったが、当初計画した軌道から大きく外れてはいない。
結局、3カ国の違いは、成長率が何%かではなく、長期トレンドの方向だ。
私たちは今、どこまで来ているのか
もちろん、まだ入り口だ。
少子化と高齢化、家計債務は、そのまま残っている。
ウォンの地位も、さらに高めなければならず、AIと半導体への依存度もまた、管理しなければならない課題だ。
しかし、構造的問題が残っているという事実と、成長経路が変わりつつあるという事実は、いくらでも同時に成り立つ。
経済史は、すべての問題が解決した後に方向を変えるのではない。新たな生産革命が先に始まり、制度と資本市場がその後を追い、ずっと後になって初めて、人々はあの時トレンドラインが変わったという事実に気づく。
過去20年間、韓国経済が歩んでいく未来を説明するうえで最もなじみ深い経路は、日本の道だった。
強い製造業と輸出競争力を基盤として先進国入りしたものの、小さな内需市場と急速な高齢化、限定的な移民、生産力に比べて脆弱な資本市場の中で、徐々に低成長へ入っていく道だった。
後発工業化には誰よりも成功したが、合衆国のように資本市場と創造的革新が新たな成長を導く段階へは移行できなかった経路でもあった。
しかし今、別の可能性が開かれている。
AI生産革命と資本市場改革が共に作動し、サプライチェーンの中核ノードが新たな成長の源泉となり、半導体とAIデータセンター、フィジカルAIを軸とした3大メガプロジェクトが生産能力そのものを再び引き上げるならば、韓国は日本の道を最も忠実にたどってきた国から、その道を最初に離れる国になる可能性もある。
2025年は、高い成長率の年として記憶されることはないだろう。
しかし、後に振り返れば、韓国経済の長期トレンドラインが方向を変え始めた年として記憶される可能性は十分にある。
バイバイ、東アジア停滞論。
まだ完成されたモデルではない。
ただし、一つだけは明らかだ。韓国は、もはや過去のトレンドラインの上にはいない。
私たち自身もすべてを理解できないまま、一度も進んだことのない成長経路に、すでに入ったのかもしれない。
それも、東アジアで最も深い悲観を通過した後、最も劇的な反転という形で。
ピーク・コリアを否定したい金容範
ツッコミどころだらけの長い文章です。
金容範(キム·ヨンボム)さんの主張が、現李在明(イ・ジェミョン)政権の正しさを強弁する「極めて政治的な主張」である点をまず指摘しておきます。
もう何度だっていいますが、「韓国には政治的でないものなど何もない」のですが、「(2025年の)下半期から雰囲気が変わったが、偶然にもその転換点は新政権の発足時期とほぼ重なる」などと書くのには恐れ入ります。
メモリー半導体の価格が急騰する時期に、尹錫悦(ユン・ソギョル)前大統領を引きずり下ろす策謀が実った――というタイミング、つまり偶然だったとしか説明できませんし、李在明(イ・ジェミョン)政権になんの功績があったわけではありません。
ただ、金容範(キム·ヨンボム)さんが「ピーク・コリア」(韓国はすでにピークは超えて下り坂に入っている)を否定したい気持ちはひしひしと伝わってきます。
Money1も「韓国の夏はもう終わった」を主張して来ましたので、これに対する反論でもあるわけです。
反論の根拠として韓国の経済成長率が2026~2027年に大きく上振れするだろう―ことを挙げています。
「韓国は2026~2027年に先進国の中で最も高い成長率が予想される国として、再評価され始めた」と述べていますが、これは結果が出てからいった方がいいでしょう。
金容範(キム·ヨンボム)さんは、製造業のエンジンに加えて、資本市場が韓国の経済成長を確固たるものとすると展望を述べています。
しかし、金容範(キム·ヨンボム)さんが言う「強い製造業の上に、強い資本市場という新たな成長軸をもう一つ載せようとする試み」が意味不明です。
これぞ韓国の行っている革新だ――という主張ですが、「ちょっと待て!」です。
「強い資本市場」を造ろうという試みなど、何かやってましたっけ?――を問わねばなりません。何を指しているのか分かりません。
そもそも資本市場を成長軸に……という考え方が意味不明です。なぜなら資本市場というのは、資金を効率的に配分する仕組みであって、市場そのものが経済成長を生むわけではありません。
経済成長を生み出す主体は、企業や技術革新、労働、設備投資、生産性の向上などです。資本市場は、それらへ資金を流す「仲介機能」を担います。
エンジンは製造業で、変速機は資本市場――という比喩は、まあいったん預かるとしても、「強い資本市場という新たな成長軸」という言説は、そのまま受け入れられません。やはりヘンです。
それよりむしろ、資金の分配先をお前ら(政府あるいは金容範(キム·ヨンボム)自身)がコントロールしようというしているのではないのか――と邪推したくなる主張です。
つまり、金容範のいう「変速機」なるものは、中立的に資金を配分する市場ではありません。政府がギアを選び、政府がアクセルを踏み、特定産業へ資本を送る装置に他なりません。
「資本市場改革」と「政府主導の資金配分」が(恐らく意図的に)混同されています。
考えてみてください。本来、強い資本市場とは、政府が投資先を決めなくても、
・収益性
・技術力
・経営能力
・リスク
・将来の需要
――などを投資家が判断し、資金が有望な企業へ流れる市場です。これこそが自由主義経済の特徴です。
ところが、金容範(キム·ヨンボム)の文章は「どの産業を育てるか」を既に政府が決めています。半導体、AIデータセンター、フィジカルAI――だというのです。
要するに「自分の見えるもの・分かるもの」にしか正しいもの(投資に値するもの)はないという、いかにも左派・進歩系人士らしいボンクラな考え方に見えます。
筆者は何もかもを疑ってかかる人間なので、このような人物はそもそも信用しませんが、現在の李在明(イ・ジェミョン)政権は経済の司令塔にボンクラを立てています。
おめでたい国です。
「バイバイ東アジア停滞論」というタイトルになっていますが、本当に言いたいことは「バイバイ韓国おしまい論」です。
(吉田ハンチング@dcp)






