株式投資を解説した初心向けの本などには「IPO株を狙え」なんてことが書いてあったりします。IPO銘柄は本当に儲かるものなのでしょうか? 今回は、IPO株についてご紹介します。
■「IPO」とは企業の株式を市場に初めて売りにだすこと
まず「IPO」の説明です。IPOとは、Initial Public Offeringの略で株を新規に株式市場に上場し、売り出すことをいいます。「IPOをかける」といった使い方がされますね。そのような新規売り出しの銘柄をIPO株、IPO銘柄と呼んだりしますが、日本語では「新規公開株」あるいは「新規上場株」と訳されます。
IPO銘柄は、初めて株式市場にデビューするわけですが、いくら値がつくかは市場の評価によります。それまでに安価に株式を購入・入手できた人、代表的な例でいえば会社の創業者、役員などはIPOによって大儲けすることが可能です。市場での評価は、購入・入手するときの価格よりも大きなものになることが多いからです。
もちろん大儲けといっても、そのときの時価で売れば、という話です。所有する株式を売却することは、会社の経営権を手放すことでもありますから、創業者や役員などが実際に株式を「儲けのため」に売却することは容易ではありません。
最近は日本でも「IPOゴール」といって、株式市場に株式を上場することが目的であって、その後の経営は二の次なんていう経営者がいます。そのような会社の株式は、最初こそ高値をつけますが、すぐに馬脚を現します。
株式を上場するということは、経営状況を開示することでもありますから(開示義務があります)、四半期ごとの決算発表などで投資家にすぐに見切りをつけられてしまうのです。このような企業のIPO株をつかんでしまったら、それこそ不幸です。
■IPO株は儲かるのか?
上記のように「IPO株に注目せよ!」なんていう人がいますが、果たしてIPO株は本当に儲かるのでしょうか? Money1の記事で何度も引用している『株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす』の中で、著者ジェレミー・シーゲルは、
「類い希なダイヤモンドの原石がみつかるかもしれないという見通しは、IPOに幅広く投資する理由になるだろうか? 新規公開株を買うことは、財産を形成する上で、健全な戦略の一環と考えていいのだろうか? (中略)かなり徹底的な調査を試みた結果、わたしはいまこうみている。IPOに投資するのは、宝くじを買うのと、とてもよく似ている」
と述べています。
1986年に上場したマイクロソフトに投資した1,000ドルは2003年末には28万9,365ドルになり、1971年に上場したインテルに投資した1,000ドルは2003年末には約190万ドルになりました。しかし、このような例を見いだすのは難しいのが現実です。
※『株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす』著ジェレミー・シーゲル/瑞穂のりこ訳(原題:The Future for Investors)P.97より引用
もちろん、同書は長期投資を薦める本ですので、短期投資であれば違うよ、という意見もあります。また、IPO株にばかり好んで投資する人がいるのも確かですが。
ちなみに筆者はIPO株には全く手を出しません。いくら高値をつけても「ふーん、良かったですね」と思っています。「どうせあのブドウは酸っぱい」みたいな態度と思われるかもしれませんが、短期利益を追求するのであればともかく、IPO銘柄を長期ホールドするのであれば、これはかなりの慧眼が必要になります。長期に利益を出し続け、長く生存することができる企業なのかどうかを見抜けなくてはならないのです。
(柏ケミカル@dcp)