オーストラリアの「外国の干渉を防止する法律」が注目されています。しかし「外国干渉防止法」と一口にいい、「外国の影響透明化制度法」が代表として取り上げられますが、その実体は複数の法律を指しています。
法律制定の目的は、外国の国内政治・経済への浸透工作を避けること、国内にある技術・企業秘密などを国外に流出させないことこです。総じていえば、国外勢力によってオーストアリアの主権・国益が損なわれないようにすることを目的としています。
次のような法律が「外国干渉防止法」の実体です。
②改正「国家安全保障法」:2018年06月29日成立
③改正「選挙法」:2018年11月27日成立
①の「Foreign Influence Transparency Scheme Act.」(外国の影響透明化制度法)がメディアなどで多く取り上げられる法律で、外国政府や組織、外国人の依頼を受けて活動するものを登録制にし(登録を義務付ける)、その活動内容を明らかにしようという内容です。
②の「National Security Legislation Amendment(Espionage and Foreign Interference)Act.」(改正国家保安(スパイ活動、外国からの干渉抑止)法)が同日に成立しているのは偶然ではありません。
この「改正国家保安法」は、外国からの干渉を防ぐために、オーストラリアの政治的・民主的なプロセスへの外国からの干渉を犯罪と定義するなど、新たに38の行為を犯罪とすることを定めているのです。つまり、オーストラリアにとっての安全保障上の脅威は何かの定義を追加したというわけです。
同時にこの定めによって影響を受ける法律が出てきます。1914年の「犯罪法」など8つの法律が内容に改正が要求されます。
③の「選挙法」はこの流れの中で改正されました。外国がオーストラリアの選挙に干渉することを防がなければならないからです。
というわけで、外国からの干渉を防ぐと一口に言っても影響する現行法のあちこちを修正しなければならないのです。また、オーストラリアでは法改正を現在も続けています。
2020年06月05日には、ジョシュ・フライデンバーグ財務相が外国からの投資の認可について「国家安全保障上の視点から新たな審査を導入する」ことを発表しました。これには監視・調査の体制を構築すること、罰則の強化などが含まれます。
日本でも、例えば「外国企業・外国人に水源地が買われている」「北海道が危ない」といった声が上がっていますが、フライデンバーグ財務相はこのようなことがオーストラリアで起こるのを防ごうとしているのです。
オーストラリア政府は建前上「特定の国を念頭に置いたものではない」としていますが、中国共産党の浸透工作に業を煮やして制定されたものであることは明らかです。
台湾でも同様の機能を持つ「反浸透法」を2019年12月31日に成立させています。これも明らかに対中国を意識した法整備です。
(柏ケミカル@dcp)