先に「宇宙一の不動産会社」と称される中国『エバーグランデ』(Evergrande Group:恒大集団)の内部文書が流出した件をご紹介しましたが、1件重要な点について書き漏らしがあったので。追記のようですがご紹介します。
内部文書によれば、2021年01月に同社は「1,300億元」(約2兆円)の償還を行わなければなりません。これが償還できなけれなデフォルトです。
お金がない場合には「ロールオーバー」(借り換え)を行う必要があるのですが、実はこれが不可能と目されるのです。
ロールオーバーというのは「先の借金の返済期限が来る前に新たな借金をして、先の借金を返す」という手段です。しかし、同社の場合新たな借金をするのが無理と推測されています。
なぜかといえば、先にご紹介した、中国共産党が新たに定めた「スリーレッドライン」と呼ばれる「有利子負債についての3つの規制」に引っ掛かるからです。
以下がその3つの規制です。
正味資本が負債の100%以上あること
短期負債は現金性資産の100%まで
そのため、同社は現在以上に有利子負債を増やすことができない――つまり先に借金ができないのです。ですので「ロールオーバーできない」となります。
なりふり構わず資金調達に手段を探す
流出文書によれば、同社は地方政府に働きかけて「子会社のIPO(新株公開)に手を貸すように持ちかけた」となっています。また、この新株を地方政府に保有するように交渉した疑惑も持ち上がっています。
つまり、これは有利子負債をこれ以上増やすことができないので、IPOによって資金調達をしようと考えた結果ではないのか、というわけです。しかも、非常に汚い手段ですがその資金を地方政府に持たせようと働きかけたのです。
同社の有利子負債は、先にご紹介したように「8,355億元」(日本円で12兆9,085億円)に達することが流出文書によって判明しています。
つまり、この金額だけ貸し込んでいる人がいるわけで、もし『エバーグランデ』が飛ぶことになったらその衝撃は子会社、関連会社、投資家、銀行はじめ金融機関、従業員、不動産を購入した個人などに波及することになります、
識者の間では「経済危機のバトンは中国に渡された」という指摘が2008年の「リーマンショック」以降になされています。
もし、『エバーグランデ』がデフォルトし、ドミノ式にデフォルトが連鎖して中国発の経済危機が生じた場合、この指摘は正しかったことになります。
とりあえずは2021年01月に償還できるかどうかが注目されます。
(柏ケミカル@dcp)