イギリスの造船・海運市況分析会社『クラークソン・リサーチ』が2021年の新規船舶発注量・受注量の推計値を発表したのですが、これで韓国は2018年から3年間守ってきた1位の座を中国に明け渡したことが分かりました。
中国企業が世界シェアの半分を取った!
2021年の発注量は「4,573万CGT」※(1,846隻)。このうち、中国は「2,280万CGT」(965隻)を受注。
中国の世界シェアは「49.9%」。ほぼ半分を占めました。
韓国は「1,735万CGT」(403隻)でシェアは「37.9%」となり、2位に転落です。
この逆転劇の主な理由は、中国が「韓国が優位だったコンテナ船」の受注に低価格を武器に挑み、発注をもぎ取ったからです。韓国企業はコンテナ船においては、価格競争力が及ばず、受注量を伸ばすことができませんでした。
韓国が「受注ラッシュ!」「ジャックポット」と誇っていたのが「LNG運搬船」ばかりだったのは、実は中国企業に押されたためだったのです。
※「CGT」は標準貨物船換算トン数。
「韓国は高付加価値な船舶に特化」という話
複数の韓国メディアで本件を報じていますが、「中国に世界第1位の座を明け渡したが、高付加価値な船舶を受注したので収益性はアップした」と書いています。
例えば『ChosunBiz』は以下のような具合です。
(前略)
韓国は2018年から3年間受注量で1位の座を守ってきた。しかし、中国がコンテナ船を中心に受注契約を取り込んで受注量格差が広がった。
ただし、韓国は液化天然ガス(LNG)船のような高付加価値船舶を集中的に受注しただけに収益性はむしろ良くなったと見られる。
昨年11月基準の韓国の1隻当たり平均船価は1億2,300万ドルで、中国の3,500万ドルより3.5倍高かった。
(後略)
ご注目いただきたいのは「収益性はむしろ良くなった」としている点です。
問題は、中国の3.5倍の価格で受注した、そのLNG運搬船が本当に利益を生むものなのか、です。
先にご紹介したとおり、韓国の造船業は「鋼板価格の値上がりのせいで赤字になった」などと鉄鋼会社に責任をなすりつけて怒られるほど収益構造が脆弱(ぜいじゃく)です。
そもそも、高付加価値などという割りには「低価格で受注」している状況が透けて見えます。要は、高付加価値製品を受注しても会社に利益が出なければ、受注しても意味はありません。
Money1でもご紹介しているとおり、韓国の造船企業は赤字続きなのです。
そこで、ご注目いだだきたいのはこれからの業績です。
韓国メディアでは「低価格な船舶は中国企業、高付加価値船舶は韓国企業と棲み分けているのだ」などという論が出ています。
その棲み分けとやらで韓国造船企業が黒字転換するのか、これが見物です。
(吉田ハンチング@dcp)